「シャコタン」は限界があるけど「シャコアゲ」は青天井? クルマはどこまで車高を「アゲ」てもいいのか (2/2ページ)

指定部品だけを使ってのリフトアップには限界がある

 いやいや、安全牌も何も指定部品ならいいんでしょ? だったらそれでガッツリ上げるよ、と考える人もいるかもしれない。だが実際はなかなか難しいのだ。たとえばスプリング交換だけで5センチほど車高を上げると、ほとんどの車種はショックアブソーバーが伸び切ってしまう。縮む方向には動くけど伸び側には動かないという状況となり、乗り心地は最悪になる。加えてショックアブソーバーに大きな負担が掛かるから壊れやすくなる、というか壊れる。

 対策としてはショックアブソーバーもブラケットで延長するか、ロングショックに交換する、あるいは車高調に交換するという手もある。ただしブラケットは指定外部品なので延長できても4センチがリミット。ショックや車高調に交換する場合は指定部品なので4センチを超えてもOKだが、その分コストがかかるし、たいてい5センチくらい車高を上げるとドライブシャフトに角度が付いてブーツが破れたり、異音が発生するといったトラブルが発生する(車種や足まわり構造にもよる)。

 ドライブシャフトの角度を補正するには「メンバーダウン」といって、メンバーにブロックを噛ませるなどしなくてはならない。そしてブロックは指定外部品につき、4センチを超えた場合は要構造変更。つまり指定部品だけで4センチの壁を超えるのは難しいね、となるわけだ。

 もちろん、構造変更もやぶさかではないという人であればもっと上げられる。具体的には4~5インチ(約10~12.5センチ)アップくらいで、このあたりが第二のリミット。なぜなら世間に出回っているキットといえば、4~5インチまでが主流だからだ。

 なぜ6インチ以上はあまりないのか? それには車高アップに伴うデメリットが関係している。見た目がカッコ良くなったり、不整地に強くなるという利点がある反面、弱点も出てきてしまうのはアゲの宿命。代表的なところだと以下のとおり。

①重心が高くなることでフラつきやすくなる

②空気抵抗が増し横風の影響を受けやすくなる

③加速やブレーキ性能、燃費などが落ちる

④直前直左が見えにくくなる

⑤乗り降りがしにくくなる

 基本的にこれらのデメリットは、車高を上げれば上げるほど顕著になっていく。サスペンションを専用品に交換する、ブレーキを強化するといった対策にも限度がある。車種にもよるが、その辺になんとか折り合いを付けられて、なおかつ見た目のバランスがいいのが4~5インチアップまでということだ。

 より正確にいうなら、たいていリフトアップと同時にタイヤ外径も大きくするだろうから、その分で1.5センチプラスして、合計約14センチアップくらいまでが構造変更組のリミットになりそう。

 一応、車種によっては6インチ(約15センチ)アップのキットも普通に存在するし、7~8インチ(約17.5~20センチ)もなくはない。

 だが、前述の通り、軽自動車や小型乗用車は、全高は2メートル以下と決められている。それを超えるなら1・3ナンバー車に変更しなくてはならない。結果、維持費が跳ね上がるケースもあるため注意が必要で、これもリミットの一つになるだろう。

 たとえばハイエースバンの標準ボディ&標準ルーフは全高1985ミリの4ナンバー車だが、リフトアップして全高2メートルを超えると1ナンバー車になる。すると税金や高速代などがやや割高になってしまうので、う~むと悩むことになるだろう。

 もっともこれはまだいい方で、軽自動車の場合はさらにキツイ。エブリイワゴンのハイルーフは全高1910ミリで5ナンバー車なのだが、これを5インチ(約12.5センチ)アップすると確実に全高2メートルを超える。結果、軽自動車の規格から外れ、3ナンバーの普通自動車扱いになってしまうのだ。1万800円だった自動車税が2万9500円に跳ね上がり、高速料金も普通車料金×8割だったところが10割になる。

 同じくエブリイ(バン)やダイハツ・ハイゼットカーゴといった4ナンバー車も、全高2メートル超えで1ナンバー車になる。2年に1度だった車検は毎年やってくるようになり、高速料金も中型トラック並みになる。

 といった感じで、とくに軽自動車の場合はナンバーが変わってしまうデメリットが大きすぎる。実質、軽自動車のリミットは2メートルまでと考えたほうがいい。ホンダN-VANなどは純正でも1945ミリ(4WDは1960ミリ)とかなり際どいので、こうした車種は3~4センチアップくらいが限界だ。


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