「自動運転中」の事故は等級が下がらず保険金支払い! 保険会社に「不利」な内容が実現したワケ (2/2ページ)

自動車メーカー以外も自動運転普及を盛り上げたいという表れ

 さて、東京海上日動火災保険が保険等級に影響しないノーカウント事故の範囲を拡大する理由はどこにあるのでしょうか。保険金は支払う、翌年の保険料値上げはしないというのでは損害保険会社は損をするだけで、まったく得をする要素はないように見えるからです。

 その理由について、東京海上日動火災保険は次のように発表しています。

自動運転中の事故で保険金を支払った場合、現行の自動車保険では、保険料の割増引率を左右するノンフリート等級が下がるため、更新契約の保険料のご負担が増えてしまい、お客さまの納得感を得ることが難しい。

 たしかに、自動運転レベル3というのはドライバーがシステム監視から解放された状態で、寝てしまうのはNGですが、スマートフォンを利用するような画面を注視する行為が法的に認められている状況です。その状態で交通事故が起きたとしてもドライバーは自分のせいだとは納得できないでしょうし、まして翌年からの保険料が上がってしまうのではなおさらです。さらに同社は次のような発表もしています。

今回の改定により、事故のもう一方の当事者である運転者(加害者)の負担軽減を図ることで、自動運転技術が進展した社会でも、事故に関係するすべての当事者にとって自動車保険がより有効なインフラとして機能するようになります。

 自動車保険というのは民間企業によるビジネスですが、もはやインフラといえるレベルで欠かせないものとなっています。自動車業界を支える一員として損保業界のトップである東京海上日動火災の矜持が、今回の改定につながったといえるでしょう。

 さらにいえば、国土交通省の発表と日付をあわせていることから、自動運転を普及させようという政府の意図も感じられるところですが、そうした事情はあからさまには表には出てこないものです。

 なお、この改定における対象となるのは自動運転レベル3以上となります。ですから、ハンズオフ(手放し)が可能であっても自動運転レベル2走行時に起きた事故については対象とはなりません。また、車両の整備不良は被保険者(≒所有者、使用者)の責任になりますので、その場合もノーカウント事故としては取り扱われないということです。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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