じつはディスクよりも制動力が高いドラムブレーキ! 大型乗用車に採用されないワケ (2/2ページ)

トラックやバスなどはこれまでドラムが主流だった

 では、乗用車においては小型車ではフロントをディスク型、リヤをドラム型としていることが多く、中大型の乗用車になると四輪ディスク型ブレーキとして、パーキングブレーキだけドラム型としているケース(ドラム・イン・ディスクと呼ぶ)が増えてくる理由は何だろうか。

 はっきりいえば、耐フェード性も含めて求められる制動力とコストバランスから決まってくる。あくまで一般論だが、同サイズのブレーキであればドラム型のほうがコストを抑えることができる。コンパクトカーでは前輪駆動が多く、フロントのブレーキに対する負担が大きい傾向にあるため、フロントだけ耐フェード性に有利なディスク型として、リヤはむしろパーキングブレーキとしての機能を考えドラム型とするのが妥当となる。

 一方で、中大型の乗用車になると車重が増え、ブレーキへの負担も大きくなるため、放熱性に優れたディスク型を四輪に採用することが機能として適切になる。もちろん、大径アルミホイールを装着しているようなクルマになると、ドラム型ブレーキではホイールの中がスカスカに見えて、いかにも寂しいと感じるのも正直なところだ。商品性として四輪ディスクのほうが高そうに見えるという面もなくはないだろう。サーキットを走るわけではなく、市街地を走っているだけであれば、必要な制動力については放熱性を含めて考えてもドラム型でも十分に事足りるというクルマは少なくないはずだ。

 なぜなら、もっと重量級で合理性の塊といえるバス・トラックにおいてはドラム型ブレーキが主流なのだ。そもそも制動力においてはドラム型が有利なのだから、重量級だからディスク型にしないといけないというわけではない(いったんフェードのことは忘れるとして)。さらにドラム型にはローコストなだけでなく、長寿命というメリットもある。そうなるとコスト最優先といえる働くクルマとしてはドラム型にするインセンティブが高くなるのだ。

 もっとも、最近では大型トラックでもディスク型ブレーキの採用例がじわじわと増えている。小型乗用車でもESC(横滑り防止装置)の義務化により、後輪ブレーキへの負担が大きくなり、その放熱性が重視されるようになっている。そうした背景もあってディスク型ブレーキが増えているという印象もある。たとえば現行フィットは1.5リッタークラスのコンパクトカーながら全車四輪ディスクのブレーキシステムを採用していたりするのだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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