「安さ」が重要な軽トラック! 脱・純ガソリンエンジン時代に「生き残る」術はあるのか? (2/2ページ)

EVが作れなければ軽トラックからの撤退を強いられる可能性も

 単にクルマ一台で問題を解決しようとするから不都合に感じてしまう。しかし、EVの導入は、クルマの使い方や充電を含め、社会が変わることを求めている。新型コロナウィルスの流行で示された、新しい生活様式の発想が、EVでも必要なのである。

 いまや、マスクをして出かけたり、人との間隔をあける気遣いをしたり、換気を行うことも、日常のこととなっているのではないか。はじめは不便を感じても、慣れれば負担はそれほど大きくはなく、それなりに心地よく過ごせることを実感しただろう。

 EVの普及と利用もそのように、新しい移動様式の発想で取り組めば、じつはそれほど面倒なことでも、不安なことでもないのである。

 そして、ガソリンスタンドに立ち寄らなくていいとか、仕事の移動でクルマの振動・騒音に疲れないとか、多少渋滞しても静かな車内に居ればあまりイライラしないとか、電気を使って車内で事務処理を済ませてしまえるとか、新しい体験が、仕事を快適にし、負担を減らしてくれるかもしれない。コインパーキングの利用で、コーヒーを飲みながら車内で事務処理をすますという使い方も紹介されている。

 そのうえで、自動車メーカーへも、商用車の在り方を、EV用にゼロから発想して開発することが求められる。走行性能だけでなく、車内の標準装備を含め、EVで最適な性能や機能が何であるかを見極めなければ、単にリチウムイオンバッテリー代を上乗せしたEVしか作れない。

 ことに軽商用トラックは、ダイハツとスズキが主力メーカーだろう。本当に手ごろでよい軽商用トラックをどちらが先に生み出せるか。そこで出遅れたとき、もう一方のメーカーは軽商用トラックから撤退せざるを得ないかもしれない。そもそも、軽商用トラックのために複数メーカーが存在する理由はないのだ。

 EVの導入は、そのように自動車メーカーの先行きを左右する試金石でもある。本気で取り組まなければ自らの市場を失う。そういう厳しい局面にもあるのだ。そしてこれを乗り切れなければ、いずれにしてもその企業の行く末は乏しい。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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