「電動化事業」と共に「レストア事業」が加速! いま自動車メーカーが「旧車」を大切にするワケ

「電動化事業」と共に「レストア事業」が加速! いま自動車メーカーが「旧車」を大切にするワケ

満を持して日産がスカイラインGT-R向けレストア事業を開始

 ニスモの、ヘリテージ・パーツをご存じだろうか? 古き良き日産車の純正補修部品を、日産、ニスモ、オーテックジャパンが部品メーカーの協力を得て復刻する事業である。きっかけはR32GT-Rだ。アメリカでの25年ルールの影響などもあり、近年は中古車価格が急上昇したことは記憶に新しい。

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 そうした転売目的ではなく、長年に渡ってR32を愛車として大切にしているユーザーのために、または在りし日のR32活躍を知って新しくR32のオーナーになろうとしている若い人に、この先いつまでも元気なR32に乗り続けられるよう、消耗部品であるハーネス、ホース、チューブや外装部品などを2017年2月から復刻している。その後、対象部品は拡大し、2020年11月にはR33&R34用E-TS油圧ユニットの修理の内容や価格が発表された。今後もR32からR34まで、ヘリテージ・パーツのラインアップを拡充する予定だ。

R33&R34用E−TS油圧ユニット画像はこちら

 このほか、日本メーカーのヘリテージ事業では、マツダが2017年から初代ロードスター(NA)を対象として開始。トヨタもA70&A80スープラ、ホンダはNSX向けのサービスが提供されている。こうしたメーカー直下の日本車ヘリテージ事業が始まった背景には、欧州メーカーを中心とした動きがある。

 世界でもっともヘリテージ分野に注力しているのは、メルセデス・ベンツだ。それでも、同社のクラシック・センターが開設されたのは1993年と、歴史はあまり古くない。なぜならば、レストア事業は収益性の面では、メーカーにとってけっして割の良いビジネスモデルではないからだ。

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 そのため、レストアは自動車販売店の一部などで行われる場合が多く、需要に応じてメーカー側が部品の復刻を検討するというのは、メルセデス・ベンツに限らず、自動車メーカーの考え方だった。それが90年代になり、メルセデス・ベンツでは復刻部品の強化や、ミュージアム事業の拡大などに伴い、レストア事業への本格進出となった。レストア需要は年々増えており、クラシック・センターはフル稼働するようになった。そのため、アフター系チューニングメーカーのブラバスなども、レストア事業を本格化させている。

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 そのほかの欧州メーカーでも、ヘリテージ分野への対応が増えているが、需要としてはメルセデス・ベンツがもっとも多い印象がある。また、別の視点で世界の各メーカーが今後、ヘリテージ分野をさらに強化する可能性が高い。

 背景にあるのは、昨今のEVシフトでその影響力を多くの人が感じている、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資だ。従来の財務状況のみならず、企業の評価基準に多様性が求められる時代となってきた。レストアは、企業における社会性という観点で自動車メーカーは今後、重要視せざるを得ない状況となる。欧州発で世界に広まる、メーカー直営のレストア事業。結果的に、往年の名車の中古車価格は上昇することになるだろう。

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