ホンダS660が2022年で生産終了を発表! 最後の特別仕様車「モデューロXバージョンZ」が登場

ピュアスポーツらしさをより一層際立たせた特別仕様を用意

 またひとつ、ホンダスポーツの灯が消える。

 ホンダは2021年3月12日、ミッドシップ軽オープンピュアスポーツカー「S660」の生産を、2022年3月に終了することを明らかにした。

 S660は2015年4月の発売以降、累計で約3万2000台を販売。走りの楽しさを最重視したあまりに荷物の置き場が皆無に等しく、“タイヤが4本付いたバイク”のような存在でありながら、多くのクルマ好きに愛されるスポーツカーになったのは間違いない。

 だが近年は、そのなかにはWLTCモード対応、衝突被害軽減ブレーキの装着義務化、ポール側面衝突基準の強化、タイヤ騒音規制の強化、バックミラーの視界範囲拡大など、環境・安全に関する保安基準の改正が頻発している。

 S660をこれらの改正に対応させるにはフルモデルチェンジに匹敵する開発費用が必要だが、直近の販売状況でその投下資本を回収するのは難しい……とのことで、残念ながらデビューからちょうど7年間で、生産終了せざるを得ないとの判断に至ったようだ。

 しかしながら、ホンダはそのままフェードアウトさせたりはせず、その1年以上前に正式アナウンスした。そして、「これまでS660を支えてくださったすべてのお客さまに、感謝の気持ちを込めた特別なモデル」として、最後の特別仕様車「モデューロXバージョンZ」を同時に発表・発売したのだ。

 そのベース車となる「モデューロX」は、ホンダ車向け純正アクセサリーを取り扱うホンダアクセスが開発したコンプリートカー。同社が“実効空力”と呼ぶ、四輪への垂直荷重を空力によって増大させるグリル一体型の専用フロントバンパーを装着するほか、ディーラーオプションの「アクティブスポイラー」を標準装備し、さらに専用のガーニーフラップを追加。内装をボルドーレッド×ブラックの本革やラックススェード、アルカンターラなどでコーディネートしている。

 さらに、専用のスプリングと前後5段階の減衰力調整機構を持つダンパーを装着。剛性のバランスを重視した専用アルミホイールを採用し、ディーラーオプションの「ディスクローター ドリルドタイプ」と「スポーツブレーキパッド」を標準装備とするなど、走る・曲がる・止まるを大幅に強化したモデルだ。

 そして、S660の前身と言えるミッドシップ軽オープンカー「ビート」に設定された最後の特別仕様車と同じ名を冠する「バージョンZ」は、シビックハッチバックにも設定されているソニックグレー・パールを特別色として設定(プレミアムスターホワイト・パールも選択可能)したほか、各エンブレムをブラッククローム調、専用アルミホイールをステルスブラック、ガーニーフラップ付きアクティブスポイラーをブラックの塗装に変更して、S660本来のピュアスポーツらしさをより一層際立たせている。

 室内も、メーターバイザー、助手席エアアウトレット、センターコンソールの各パネルをカーボン調とし、ドアパネルに黒のラックススェードとボルドーレッドの合皮、グレーのステッチを施して、よりレーシーかつ華やかな装いに。Modulo Xロゴ入り専用シートセンターバッグを標準装備し、専用Version Zロゴ入りアルミ製コンソールプレートを装着したのも、心憎い演出と言えるだろう。

 S660の有終の美を飾る「モデューロXバージョンZ」は、敢えてCVT車を設定せず6速MTのみとして、価格は315万400円。台数限定車ではないものの、S660全体の生産台数枠がデビュー当初より決して多くはなく、生産終了までに残された時間もあと1年。S660を買うべきかどうか以前より迷っていたならば、この「モデューロXバージョンZ」をすぐにでも注文した方が良さそうだ。


遠藤正賢 ENDO MASAKATSU

自動車・業界ジャーナリスト/編集

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ホンダS2000(2003年式)
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