後席を「どう使う」かで便利か不便かがわかれる! 超少数派ながらクルマの「観音開きドア」が存在するワケ (1/2ページ)

ふたつの様式にわけて考えることができる

 極めて少数派ではあるが、ときどき登場しては消えていく観音開き左右ドアのクルマ。直近の話題は、なんといってもマツダMX-30だ。そんな観音開きには本当にメリットはあるのだろうか。

 そもそも観音開きとはどんなドアを示すのかから、おさらいしておこう。観音開きとは、真ん中から左右へ向かって2枚のドアが開く構造の開き戸のこと。仏壇の扉をイメージすればいいだろう。クルマにおける観音開きドアは、ルノー・カングーのようにテールゲートへ採用する例と、MX-30のように側面へ採用する例がある。前者が商用バンやトラックに採用されることが多い理由は、フォークリフトで荷物を積み下ろしする際に開いたドアが邪魔になりにくいからだ。またトヨタ・ランドクルーザーなどのSUVでは、背中に背負ったスペアタイヤを上へ跳ね上げるのが現実的ではないから横開きドアとしている事情もある。

 本題となる車両側面の観音開きドアだが、ふたつの様式にわけて考えるとメリットを理解しやすい。ひとつはファントムやカリナンなどロールスロイスの4枚ドアのモデル、トヨタの初代クラウンやそのイメージを蘇られたオリジンなどに使われているタイプだ。

 このタイプは後席ドアが大きく、開口部が十分に広く確保されている。だから乗り降りもしやすく、開いたドアが乗降を妨げないなどメリットが多い。それらは乗降のための観音開きなのだ。

 ただし、ウィークポイントもある。それは室内からドアの開け閉めがしづらいこと。だから後席乗り降りのたびに運転手やドアマンがリヤドアを開け閉めしてくれるような環境、もしくはロールスロイスのように電動化してくれるならアリだが、一般的なセダンには難しいだろう。そのため普通のセダンには採用されないのだ。

 余談だが、リンカーン・コンチネンタルの2020年モデルには、リヤドアを通常の前ヒンジタイプから後ろヒンジへ大改造して観音開きとした特別仕様が限定車として用意された。高級サルーンとして、後ろ側へ開くリヤドアは大きな意味があると同時に、現代においては特別感を演出する象徴なのだ。


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