レースでも採用されたのにナゼ? 市販車ディーゼルにスポーツモデルが存在しないワケ (1/2ページ)

ディーゼルエンジンを積む乗用車はヨーロッパが主力だ

 環境性能値の相次ぐ偽装で世界的に問題が噴出したディーゼルエンジンだが、結局、実用車の内燃機関としてしか普及しなかった。レース用ではディーゼルエンジン車もあったのに、市販高性能車(=スポーツカー)で採用されなかったのはなぜなのか、という疑問をお持ちの方もいるだろう。ディーゼルエンジンについて、いま1度振り返ってみよう。

 ディーゼルエンジンの特徴は、混合気の点火にスパークプラグ(ガソリン機関)を用いず、高圧縮比によって得られる圧縮着火の方式のため、発火点の設定さえすれば精製度の低い(=廉価な)燃料が使える点にある。また、高圧縮設計となるため熱効率が高くなる側面を持つが、今度は摩擦損失、慣性損失(頑丈な構造とすることによる重量増)が大きくなり、実用化にあたって圧縮比上限が自ずと制約される特徴がある。

 さらに、拡散燃焼のため1気筒当たりの出力はそれほど高くないが、反面、気筒容積にほぼ制限がなく排気量の拡大に自由度があるため、必要な出力が得られるまでエンジン排気量を上げるエンジン設計が可能だ。この場合、排気量が上がるほど低回転になるが、大型船舶用の機関と考えた場合、実用回転域が低回転となるのはむしろ好都合で、ガソリン機関では実用不可能な排気量、回転域で機能するエンジンとなっている。

 さて、ディーゼルエンジンを積む乗用車だが、主力はヨーロッパで、戦後からいくつかのメーカーが実用化に取り組み、ロングライフ性、燃費性能のよさなどから特定層に高く支持されてきた歴史を持っている。ただ、乗用車用の内燃機関として注目が集まったのは2000年代に入ってからのことで、二酸化炭素の排出削減に向いた機関であることを自動車メーカーが提唱したからだ。実際、コモンレールディーゼル(電制ディーゼル)に代表されるメカニズムの進歩により、小型コンパクトで高性能なエンジンが実用化されるようになっていた。


新着情報