パンクしても走れる「神タイヤ」じゃない? 「ランフラット」の仕組みと普及しないワケ (2/2ページ)

現在はサイドウォール部を強化したタイプが主流

 このランフラットタイヤ、当初は二重構造で考えられていた。通常の気体入りタイヤの内部にソリッド構造の小径タイヤを設けたものと考えてもらえばよいだろう。何らかの理由によって内部の封入気体を失って潰れた場合、今度は内側のソリッド領域の部分が支えとなり、走行を可能とする方式である。もちろん、正常な状態のタイヤと較べて走行性能はかなり劣ることになるが、走行不能になることはなく、自宅、タイヤ修理店など、最低限の目的地までそのまま走行が可能だ。危険回避性能と言い換えてもよく、戦闘地帯での行動を前提とした軍用車両で採用されている方式だ。要するに、危険地帯から脱出し、安全なエリアまで回避したところでタイヤ交換をすればよい、という考え方である。

 この二重構造によるランフラットタイヤは、乗用車用としても採用されたが、タイヤ性能や乗り心地の確保に対し、コスト面と危険回避性を較べて考えると、それほど大きなメリットがないと判断され、普及にいたらなかった方式である。

 この二重構造方式に対し、サイドウォール部を強化したランフラットタイヤが開発された。アウト/インの両側サイドウォール部の強度を引き上げることで、封入気体を失っても、強化されたサイドウォールが支えとなって走行を可能とする方式である。現在の乗用ランフラットタイヤはこの方式が主流で、通常のタイヤと較べても各性能の低下幅が小さく、実用走行に耐える内容となっているが、最終的にはコスト(メーカー納入価格)とタイヤトラブル発生の可能性を天秤にかけ、通常一般の量産車では、標準装着が見送られているのが現状である。

 ランフラットタイヤの価値は、封入空気を失っても走行可能という特徴をどう捉えるかによって決まってくる。通常の乗用車用タイヤとして考えた場合、タイヤ交換なしで走行を続けられることがメリットだが、考えられるケースは、ほとんどの場合がパンクと考えてよいだろう。パンクの場合、いきなり封入空気を失うケースは少なく、異物(クギなど)が刺さったまま走行を続け、その結果、徐々に封入空気が漏れ、気がついたらタイヤが潰れていたことでパンクに気付く場合が案外多い。

 走行中に封入気体を失い、走行不能となってタイヤ交換を余儀なくされるケースをどう考えるか。転ばぬ先の杖ではないが、こうした事態まで想定し、万が一パンクした場合、出先でのタイヤ交換は困る、自分でタイヤ交換は無理という人は、リプレイス用のランフラットタイヤが市販されているので、これに替えておくのは予防安全になるだろう。ただし、通常のタイヤと異なり用意されているタイヤサイズが少ないので、必ずしも自分のクルマにあったランフラットタイヤが入手できるとは限らないので要注意だ。


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