ハイブリッド化はナシで自然吸気で突っ走る! フェラーリの新たな12気筒モデル「12チリンドリ」はクーペとスパイダー同時デビュー (1/2ページ)

この記事をまとめると

フェラーリが新型12気筒モデルとなる「12チリンドリ」を発表した

■ハイブリッドなどの電動化がされていない自然吸気の6.5リッターV12は830馬力を発生

■オープンモデルとなる「12チリンドリ・スパイダー」も同時公開

「チリンドリ」はイタリア語で「シリンダー」を意味する

 フェラーリは5月3日、長くその誕生が待ち望まれていた新型12気筒モデルの「12 Cilindri(12チリンドリ)を発表した。12チリンドリ、イタリア語読みでは「ドーディチ・チリンドリ」となるこの車名は、フェラーリ伝統のV型12気筒自然吸気エンジンをフロントミッドシップすることをダイレクトに表現したもの。

 この次期12気筒モデルに関してはハイブリッド化などさまざまな情報が流れていたが、フェラーリは見事に1947年に生み出された125S以来の伝統であるV型12気筒自然吸気を、現代の最新作として市場に送り出すことに成功したことになる。

 だが、フェラーリから発信されたプレスリリースの最初に掲げられたタイトル、個人的にはやや違和感を覚えるものだったことも正直な感想だ。「FERRARI 12 CILINDRI FOR THE FEW」。わずかな人、あるいは限られた人のために作られたという12チリンドリは、限定車ではなくシリーズモデルであるから、それはおそらく生産期間の短さを示唆するタイトルではないかと予想される。フェラーリはこの12チリンドリの開発に約4年という時間を投じたというが、さらに新たな技術を搭載したその後継車の開発も、かなりのレベルまで進んでいると考えるべきだろう。

 12チリンドリのデザインは、フラヴィオ・マンゾーニをチーフとする、フェラーリ・スタイリング・センターのデザインチームによって行われたが、そのデザインコンセプトが、前作の812スーパーファストから大きく変化しているのも見逃せないポイントだ。クリーンなライン構成で構成され、ボディ全体をシームレスな造形にまとめる手法は、フェラーリの作ではローマのそれに近く、同時に回顧主義的なデザインとは一線を画すと説明されるものの、フロントセクションのフィニッシュからは、1960年代にデビューした365GTB/4、すなわちデイトナのそれを直感的に意識させられるのは自然な感想だ。

 リヤのデザインもフロントと同様に、ボリュームを引き算していくことで独自の、そして厳格さをテーマとした造形が完成された。デザインチームは、おそらくはこのリヤセクションのスタイルと機能の両立には相当な苦労を強いられたに違いない。

 リヤスポイラーの代わりに、リヤスクリーンと最大10度ライズアップする2個の可動フラップを採用。特徴的な三角形のテーマを作り出している。テール部ではディフューザーのフィンが際立ち、ボディが浮かんでいるようにも見える。テイルパイプは12気筒車の象徴ともいえる4本出しでこれも新デザインとなる。

 12チリンドリに搭載されるエンジンは、前でも触れたとおり自然吸気のV型12気筒、フェラーリの社内型式ではF140HD型と呼ばれるものだ。6496ccの排気量から新たに得られた最高出力は830馬力、最大トルクは678Nmという数字だが、前者は9250rpmで、後者は7250rpmで発揮される高回転型ユニットであることに驚かされる。レブリミットは9500rpm。このV型12気筒エンジンに8速デュアルクラッチF1 DCTを組み合わせ、後輪を駆動するのがパワートレインの簡単な全体像となる。


山崎元裕 YAMAZAKI MOTOHIRO

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 /WCOTY(世界カーオブザイヤー)選考委員/ボッシュ・CDR(クラッシュ・データー・リトリーバル)

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ
趣味
突然思いついて出かける「乗り鉄」
好きな有名人
蛯原友里

新着情報