GR! ニスモ! モデューロX! 「儲からない」のに突如国産メーカーが「走り」にこだわるワケ (2/2ページ)

NISMOは特別感、Modulo Xは完成度の高さを狙う

「NISMO」というモータースポーツブランドでスペシャルモデルを用意する日産の狙いは、ひとことでいえば「特別感」だ。標準仕様の倍以上となる2420万円(2020年モデル)の価格を掲げた「GT-R NISMO」を頂点に、コンパクトカーの「マーチ NISMO」、そして電気自動車の「リーフ NISMO」など幅広く展開する。

 究極の性能を持つGT-R NISMOはもちろんのこと、「マーチNISMO S」ではパワートレインを標準仕様の3気筒1.2リッター+CVTに対して4気筒1.5リッター+5速MTへ積み替えるなど思い切った手が入り、その特別感を得られるのが魅力だ。

 それらは「NISMOロードカー」と呼ばれるが、狙いはいくつかある。GT-R NISMOは世界の頂点を極めることだし、いっぽう200万円を切る価格で提供されるマーチNISMOなどは気軽にスポーティな走りを味わうためだ。また、現在は廃止されてしまったがかつてはミニバンのセレナを仕立てた「セレナ NISMO」も展開していた。それは、ファミリーカーでもときには走りを楽しみたい人に向けた商品だ。

 それぞれの目的は異なるが、共通するのは「日産車のブランドイメージを高める」という土台。“特別なクルマ”を提供することで、ブランドの価値を高める狙いがあるのだ。単にスポーティなだけでなく、インテリアを上質に仕立てているのもNISMOロードカーに共通する特徴だ。

 ステップワゴン、フリード、S660などで「モデューロX」を展開するのがホンダ。いずれもエクステリアを変更して室内を上質化するとともに、こだわりのサスペンションチューンが織り込まれている。

 モデューロXの走りに対する情熱は熱く、車種によっては納得できるものができるまで1年以上を開発に費やすというのだから驚きだ。それらは、ひとことでいえば“完成度の高いホンダ車”。「ここまでやれる」というホンダ車の理想を求めた“象徴”のような存在といっていいだろう。

 よく考えると、考え方はそれぞれ。走る楽しさを求めて走行性能を磨いたモデルというのは共通しているが、求めていることは似ているようで違うのだ。

 ただ、すべての車種に共通していることもある。それは「走りの楽しさを忘れない」という決意。そして「ベース車よりも車両価格が高い」ということ。

 スポーツモデルというくくりはあるものの、「なんとか、財布のひもを緩めてもらおう」という一つのチャレンジでもあるといえるのではないだろうか。

 もちろん「本格的なスポーツカーが減ってしまったけれど運転好きやクルマ好きに満足してもらえるようなクルマを提供する」というのが前提にあるのは言うまでもない。対象がかつてよりもニッチとなったので、そのぶん完成度を高めてこだわったモデルを提供するという意気込みもあるだろう。


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