アメリカでバカ売れの「ピックアップトラック」! 日本で乗る「意外な苦労」と「驚くほどの楽しさ」とは (2/2ページ)

修理代があまりかからないのも魅力のひとつ!

積載性

 ピックアップトラックは、筆者がバイクを積載していたことからもわかるとおり、大きな荷物が積めるのも魅力だ。ほかにも、たとえばホームセンターで購入したDIY用の木材など、長尺物でもガンガン積むことができる。

 ただし、荷台に屋根がないため、あまり背が高い荷物やダンボールをたくさん積む場合には、ロープなどで固定しない限り積み荷が安定しない。ハイラックスに乗っている時代に、一度、知人に引っ越しの手伝いを頼まれたことがあるが、現場に行って愕然とした。「トラックだから荷物がたくさん積める」と思い込んでいた知人の荷物はかなり大量で、大型冷蔵庫など長尺物もあった。ロープで荷物を固定しない限り、まず積載は無理だった。結局、トヨタの商用バン、ハイエースを持つ別の知人に頼み込み、急遽出撃をお願いし、なんとか荷物を運ぶことができた。

 筆者は、ハイラックスにバイクを積む時はタイダウン(長さが調整できるロープ)で固定していたが、さすがに大量の引っ越し荷物を積むことはできない。単純に、量では積載スペースに「屋根がある」ハイエースに軍配が上がるのだ。

 荷台に屋根がないことで起こる問題はほかにもある。雨が降ると荷物が濡れるのだ。とくに、雨が多い日本では、濡れたら困る荷物を積みにくい現実がある。現行ハイラックスの場合、ディーラーオプションで荷台上面を覆うソフトタイプのトノカバーが用意されていて、それを装着すれば、ある程度は積み荷が濡れることが防げる。ただし、その場合、荷台より高さがある荷物は積めない。

 また、基本は幌なので、カッターなどで簡単に切ることができ、防犯性もあまり高くない。トノカバーには、車外品などで樹脂製のハードタイプもあり、そちらのほうが防水性も高く、ロック付きなら荷物もある程度は安心して積むことができるだろう。一体成形でダンパーで開閉するタイプから、折りたたみ式で簡単に脱着できるものまでさまざまなタイプが販売されているので、もし高い荷物を積むのでなければ、ハードタイプがおすすめだ。

悪路走破性

 日本で普段乗るには、不便なことも多いピックアップトラックだが、こと遊びに関しては使い勝手はいい。まず、4WD性能が抜群で、悪路走破性が極上なことだ。

 筆者は、モトクロスのほかに、冬期はよくスノーボードに行ったが、冬タイヤとハイラックスの高い4WD性能との組み合わせは、深い雪道でも高い走行安定性を発揮し無敵だった。しかも、ハイラックスは、昔からパートタイム4WD機構を採用しており、普段は2WD(FR)で走行することも可能。また、4WDには、滑りやすい路面で使うがある程度の高い速度にも対応する「H4」というモードと、速度は遅くなるがより強力な駆動力を発揮する「L4」というモードも設定している。しかも、切り替えがダイヤルスイッチで簡単にできる。

 さらに、現行モデルには、「アクティブトラクションコントロール」も装備する。これは、H4かL4のときに、タイヤのスリップを検知すると、空転した車輪にブレーキをかけて残りの車輪に駆動力を配分する機構だ。最新の技術により、雪道や岩場など、悪路での走行安定性はさらに向上している。

 アウトドアで使うもので、濡れても平気な荷物であれば、ピックアップトラックは気軽に積めることも魅力だ。筆者のようにオフロードバイクを積めるのはもちろん、たとえば、カヌーやマウンテンバイク、ジェットスキーや釣り竿などのフィッシング用品、テントをはじめとするキャンプ用品などがガンガン積み込める。

 積む荷物によっては、荷台が傷付くこともあるが、これもハイラックスにはオプションで、荷台やゲート内側を保護する「ベッドライナー」が設定されている(ベッドは荷台のこと)。これを装着すれば、荷台に傷が付かず、濡れたり泥が付いたものを積載しても、汚れが目立たず、簡単に洗い落とせるので便利だ。

 ちなみに、旅行やレジャーなどで遠方に行く際は高速道路もよく使うが、ハイラックスの場合は料金が普通車より高くなる。1ナンバー登録で中型車に該当するためだ。燃料代は、2.4リッターのディーゼルターボを搭載するため、ガソリン車よりは安い。だが、最近は軽油の価格もかなり上がっており、長距離を走ればメリットは出るが、近距離移動が多い場合はメリットは少ないだろう。

車検・維持費

 ほかにも、ハイラックスの場合は、1ナンバー登録になるため、たとえば毎年支払う自動車税環境割が1万6000円/年と、排気量が同じ2リッター超~2.5リッター以下の範囲に入る普通車の4万5000円/年と比べるとかなり安い。だが、車検は、普通車が新規登録から初回が3年なのに対し1ナンバー車は2年、以後は普通車が2年毎なのに対し1ナンバー車は1年毎となる。また、任意保険も、保険会社の商品によっても違いはあるが、1ナンバー車は比較的高い傾向だ。

 ただし、基本的に商用車であることもあり、頑丈さはピカイチで、故障しにくい。そのため、修理代があまりかからないのは魅力だ。筆者が最後に乗った6代目ハイラックスは2.7リッターガソリン車だったが、定期的にエンジンオイルさえ変えていれば、10年乗っても大きな故障で修理した記憶がない。

 もちろん、乗り方や走行距離、使用状況や駐車場などの保管場所によっても変わるため、一概には言えないのは確かだ。だが、たとえばハイエースが10万km乗っても大きな故障がないと言われることと同様、同じトヨタの商用車であるハイラックスも、高い耐久性を誇っていることは間違いないだろう。

 市街地などの細い路地で走りづらかったり、雨の日の積載性や1年車検など、日本では日常の使い勝手にデメリットも多いピックアップトラック。だが、ひとたび郊外などのアウトドアに出かければ、高い悪路走破性や濡れた荷物でも気兼ねなく積める気軽さなど、魅力も多い。なにより、スタイリッシュなSUVが全盛の今、無骨な本格的クロスカントリー車的スタイルが逆に新鮮だったりする。「遊びがメイン」と割り切れば、ピックアップトラックは日本でも十分に魅力があるクルマなのだ。


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