「エリーゼ」「エキシージ」「エヴォーラ」がもう買えない! ロータスの生まれ変わりで「消える」3台の名車とは (1/2ページ)

四半世紀以上愛され続けたモデルも存在!

 この2021年7月6日、ロータスの本拠地であるヘセルにおいて、新世代ロータスの第1弾となる“エミーラ”が発表されることになっています。エミーラは翌々日の8日から開催されるグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードにも登場することになっているので、僕たちはおそらくオンラインなどで走行シーンを見ることができるかもしれません。

 どうやら電動ハイパーカーであるエヴァイヤにも似たスタイリングを持つロータス最後の内燃機関搭載モデルとなるようですが、果たしてどうなるか。ファンとしては楽しみであるような不安でもあるような、不思議な気持ちです。

 けれど新しいモデルの登場というエキサイティングな出来事の裏側で、タイムリミットが刻々と近づいてきているという現実もあるのですよね。そうです、エリーゼ、エキシージ、エヴォーラという現行ラインアップ全モデルが生産終了となる、その瞬間です。アナウンスがあったのは2021年1月25日。今年に入ってから最初の、スポーツカー好きにとっての大きな衝撃でした。

 とくにエリーゼは四半世紀以上も愛され続けた長寿モデル。ポルシェ911のように改良と進化を続けながらこれからも作られていくのだろう、と漠然と考えていた人も少なくなかったと思います。もちろん僕のそのひとりでした。

 エリーゼが誕生したのは1995年。設計・構造の部分ではそれまでのロータスと何ら繋がりのない、まったくのニューモデルとしてのデビューでした。基本構造は、航空機用の強固な接着剤でアルミ合金の部材を接合した単体重量わずか68kgのバスタブ型モノコックとFRP製ボディの組み合わせ。そこに96kgほどとやはり軽いローバーKシリーズエンジンをミドシップマウントし、初期のモデルは690kgと恐るべき軽量を誇っていました。

 この初期のエリーゼに初めて乗ったときの驚きは、今でもありありと思い出すことができます。ステアリングをスッと操作した瞬間の、間髪入れないヒラリとした身のこなしの軽やかさ。“これならどうにでもコントロールできるかも”と直感させるほどのわかりやすさと素直さ。

 エンジンのパワーはたった122馬力に過ぎませんでしたが、峠道を爽快に走り回るには充分な速さを見せてくれましたし、“蝶のようとはこのことか!”と思わせられるほどの軽快にして鮮やかなコーナリングパフォーマンスも堪能させてくれました。そこにはエンジンのパワーに依存せずに完成している操縦する楽しさがありました。そしてそれは、1960年代や1970年代のロータスの名車たちのそれを、すっかり思い起こさせるものだったのです。従来のモデルたちとはクルマ作りの哲学の部分でしっかりと繋がっていたのですね。

 その後、エリーゼは数回のフェイスリフトや搭載エンジンの変更、それらに伴うサスペンションのリセッティングなどが行われてきましたが、最終モデルも基本的にはデビュー当時と同じベクトルの上。つまり、抜群のハンドリングを持ったドライビングマシン。その分野を四半世紀にわたってリードしてきたのです。

 エキシージも、エリーゼなくして生まれることはありませんでした。なぜなら最初のモデルは、エリーゼのワンメイクレース仕様であるスポーツ・エリーゼをベースに、サーキットをも楽しみたいドライバーに向けて開発されたモデルだったからです。

 初代が登場したのは2000年。前後のトレッドを拡大してサスペンションも強化して、Kシリーズエンジンも178馬力までパワーアップされていました。ルーフにエアの導入高を設け、フロントにスポイラーを、リヤにウイングを備えるなど、サーキットで走ることを前提にしたエクイップをたくさん持つロードカーでした。

 このモデルもエリーゼと並行して発展し続け、2013年にはV6エンジンを導入してエリーゼとは似て異なる“ストリートも走れるレーシングカー”のような素晴らしくシャープなモデルへと変貌を遂げました。そのパフォーマンスは、とてもワインディングロードなどではフルには活かせないレベル。最終的にはドライで1100kgほどの車体に426馬力で、0-100km/h加速3.4秒、最高速度290km/hという、ライトウエイトスポーツカーの領域をはるかに越えるところまで到達しました。


嶋田智之 SHIMADA TOMOYUKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
2001年式アルファロメオ166/1970年式フィアット500L
趣味
クルマで走ること、本を読むこと
好きな有名人
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