国内市場規模は小さいのに堂々14社! 世界的にみて日本の「自動車メーカー数」が多いワケ

国内で自動車を生産するメーカーは14社存在する

 グローバルで見ると、日本には自動車メーカーの数は多いのか、それとも少ないのか?

 自動車メーカーと二輪車メーカーの業界団体である、日本自動車工業会は現在、乗用車、トラック、バス、二輪車など国内で自動車を生産するメーカー全14社によって構成されている。こうした日本のメーカー数は、グローバルでは”多いほう”に属する。

 海外と比較して、国別で2020年販売台数が多い順から各国のメーカー事情を見ていこう。

 まず、2531万台でトップとなった中国はメーカー数では他の国を圧倒するほど多い。大手メーカーでも30以上あり、中小含めればその数は100近くにのぼる。

 背景にあるのは、一汽トヨタ、東風日産、広汽ホンダといった、中国地場メーカーと海外メーカーとの合弁事業の存在だ。中国政府の産業振興施策として、海外メーカーが中国で自動車を製造・販売する場合、中国地場メーカーとの合弁事業が必須とした。

 また、製造と販売ルートは、合弁する中国企業と同一とする「製販一致」が原則であるため、海外メーカーは複数の地場メーカーと合弁を組むことになり、結果的に自動車メーカーの数が一気に増えた。さらに、90年代以降、急成長し始めた自動車産業に他産業からの参入が増えたことでも、中小メーカー数も一気に伸びた。

 続いて年間台数第2位は1445万台のアメリカだ。

 アメリカの場合、以前はビッグ3、近年ではデトロイト3と呼ばれる、gm、フォード、ステランティス(仏PSAとFCA:フィアットクライスラーが合併)がアメ車の軸足となり、このほかに日系と欧州系が全米各地に生産拠点を持つ。

 その次が、460万台の日本で、さらにインド、ドイツ、フランス、ブラジル、イギリスと続くが、これら各国の地場メーカー数はけっして多くない。そのなかでイギリスはジャガーランドローバーがインド資本、ロールスロイスとベントレーがドイツ資本であるなど、メーカー数は他の欧州国よりは多いが海外資本の影響力が強い。

 こうしてグローバルを見渡してみると、日本は独自資本で多様なメーカーが混在していることが改めて分かる。

 その上で、日本の自動車産業史を振り返れば、戦前は二輪メーカーが乱立し、戦後になってからは二輪車から商用三輪車への事業拡大、また海外メーカーとの技術提携を基盤とした四輪車開発など、60年代から70年代の高度経済成長期で現在に至る自動車メーカーの全体図がほぼ固まったといえるだろう。

 神奈川、埼玉、三河、大阪、広島など、各地の地域性を活かした地場メーカーが、日本人が得意とする”丁寧なものづくり”を貫いた新型車を次々と市場を送り込んだのだ。

 こうした各社のものづくりに対する独自性が、日本の自動車メーカー数がグローバルで”多いほう”である理由だと思う。

 ただし、今後はEVシフトの大波をうけ、メーカー間の共同開発が一気に増えることで、ブランドとしては多様化が続いても、実質的に自動車メーカー数が減少に向かう可能性も否定できないと思う。


桃田健史 MOMOTA KENJI

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