まるで別モノのように大変化! 11代目シビックのインテリアへの入魂っぷりを直撃取材

「市民の」クルマとして愛されるインテリアを追求!

2021年秋に日本での発売を予定している新型11代目ホンダ・シビックハッチバック。先代モデルから進化したポイントは数多く挙げられるが、そのなかでも一目見てすぐに変わったとわかるのが、インテリアだろう。デザインを担当した本田技術研究所の小川泰範さんに、その狙いとこだわりのポイントを聞いた。

──シビックが今回フルモデルチェンジしてもっとも大きく変わったのがインテリアだと思いますが、この方向性の変化はある意味で冒険だと感じています。このようなデザインを採用することに決まった経緯はどのようなものだったのでしょうか?

小川 ターゲットユーザーである20代の志向は我々と近く、「自分は本当はどういうものが欲しいんだろう?」と考えた結果、見せつけるようなものではなく、「ちゃんと質感が高いよね」というものだろうと。そして今回もっともこだわったのは、クルマは運転するものなので、「運転するのにもっとも適した形は何だろうか」を突き詰めていったらこういう形になった、という所ですね。
「若い人たちがシンプルなものが好きだからこういう形にしました」というよりは、「一番使いやすいのが好きだよね、彼らは。じゃあ、そういうものはどうしたら出来るのだろう?」と考えて作り込んだ結果がこれになった、という順序です。

──その質感が大幅に上がったと感じるのですが、「特にここのクオリティを上げるために工夫しました」というポイントはありますか?

小川 インテリアの上面はどうしても何もなくなってしまうので、デザインの難易度は高いですね。メッシュパネルも、質感を上げるためというよりは、今回「ファインモーニング」というインテリアデザインのコンセプトを掲げていますが、朝の強い日差しに室内が照らされると、お客様があまり見たくないエアアウトレット内部の構造体が見えてしまうんですね。あれは我々の都合でお客様は関係ない、隠したい……と考えたことで、あのアイディアが浮かんできました。
しかし、ただ隠すだけでは芸がないので、もう一段質感を上げるとなった時に、メッシュもパンチングメタルを入れて、それを機能と連動させました。ですから今回、質感と機能を常に連動させながらデザインしています。
もうひとつ頑張った所がありまして、それはセンターコンソールです。

──これは……ヘリンボーンですか?

小川 そうです。これは、塗装やフィルムを使っていないんですね。表面を磨いた上に柄を彫っていて、見た目に価値があるだけではなく、人が触った後に指紋が残りにくくしているんです。また、爪が長い人はどうしても引っ掻いてしまうので、そうしたスクラッチも残りにくいようになっています。
今回ターゲットにしている層は、「アルミを削り出しました」「革です」といっても「なんで?」と気になると思うので、価値がある理由を捉えてもらえるように意識しました。

──フロントシートは今回2種類ありますが、骨格は両方とも同じですか?

小川 はい。フィーリングに関わってくるポイントはすべて同じですね。グレードごとに形状を変えた理由は、革には革らしい表現方法があって、布にも布らしい表現方法があります。革にはおおらかさがありますので、こちらはできるだけ大きな面積を使っています。布の方はノリの効いたシーツのような表現を……ということで、肩まわりのスタイリングを変えています。

──革シートの方が肩まわりのサポートが広いように感じますが……。

小川 性能的には正直ほとんど変わりません。変わらない範囲でデザインしています。

──確かに運転中、肩甲骨は背もたれに触れていても、肩そのものは浮いていることのほうが多いですよね。

小川 もっとも運転に効く接触面まではきっちり守っているので、どちらかと言えばデザインの表現と思っていただければ。

──MTのシフトノブが、先代の前期型に戻ったような気がしますが……。

小川 上級グレードの「EX」は先代の後期型と同じ形ですので、どちらもキャリーオーバーです。

──操作系の革の触感や形状はどう作り込んでいますか? 今回、ステアリングのグリップが太くなったような気がしますが……。

小川 操舵の際、ステアリングを実際には一定でまわしていないので、当社のマイスターと一緒に作りながら、我々はクレイモデルを削って……。どのポジションでも手に吸い付く、運転にベストなものは何かを考えながら作りました。

──ステアリングも、太さ細さを決めるのは難しいですよね。

小川 最終的には好みも入ってきますが、指が自然に収まるようなものを目指しました。

──ステアリングの表皮は、グレードによって違うのでしょうか?

小川 表皮は同じですね。

──しっとりした手触りになっているのが良いですね。本革でもカチカチで滑りやすいものが結構ありますから。最近はウレタンでも下手な本革より余程手触りの良いものが増えてきていますよね(笑)。ステアリングスイッチは新設計ですか?

小川 はい、新設計ですね。わけるべきものはちゃんとわけましょうと。操作感も「カチッとすべき所はカチッとさせたいよね」と。毎日触るものなので、グラグラした瞬間にクルマ自体を信じられなくなってしまいますから、それは避けたいなと。

──そうですね。ステアリングは丸ごと新作ですか? センターパッドもこの形状はほかの車種にはないですよね。

小川 はい。

──見た目だけではなく機能面もプラスアルファで……。

小川 見た目と機能を常に両輪で考えてきて、このように出来上がりました。「上質」という言葉だけにしてしまうと、シビックならアコードには勝てなくなりますので、ちゃんと使えて、使う時にベストなものを……というのが、シビックにとって一番の質感と考えています。

──実際に質感と機能を試せる日が来るのを楽しみにしています。ありがとうございました!


遠藤正賢 ENDO MASAKATSU

自動車・業界ジャーナリスト/編集

愛車
ホンダS2000(2003年式)
趣味
ゲーム
好きな有名人
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