【試乗】GR86もBRZもMTもATも全部乗ったぞ! 「速く」「扱いやすく」進化した走りを詳細リポート (3/4ページ)

BRZよりもリヤの接地性に優れているGR86

 次にGR86の6速MT仕様に乗り換えてみよう。エンジンについては同じスペックだが、エンジンサウンドを聴かせる制御がBRZと異なるようで音量がやや抑えられ控えめだ。またアクセルの踏み込みに対するトルクのピックアップは、公表資料によればトヨタのほうがより低速から大きなトルクを立ち上げているとされているが、運転している感覚としてはスバルのほうがよりパワフルでパンチのあるエンジンとして感じ取ることができた。

 各コーナーの最高到達速度はほとんどBRZと変化がない。これはほぼ同じ車重と動力性能で考えれば十分納得のいくものだ。

 一方、フロントのハウジングをスチールとしたことでGR86のステアフィールは、テストドライバーの説明ほどにはリニアな印象とはならなかった。BRZの粘る感じのロードホールディング感に対し、GR86のほうがむしろ操舵力が軽く、路面の手ごたえを掴みにくい傾向に感じられた。とくに高速コーナーではターンインにおいてアンダーステアを生じやすくなっており、ステアリングの切り込んでいる時間なども多くなっている。

 その反面、リヤの接地性は非常に優れていて、ブレーキングのスタビリティーや旋回加速中のトラクションのかかり方などもBRZより優っている。そのことがコーナーの入り口で遅れをとっても立ち上がりの加速でそれを取り戻し、最終的な到達最高速度をほぼ同等に揃えるという両車の特性が違いながらも似たような速さへ仕上げることへの回答となっているようだ。GR86は高速旋回中のリヤの粘りがより安定していて、ドリフトアングルのかなり深いところまでコントローラブルに操っていける。パワードリフトをしてその姿勢を維持しやすい特性になっているわけだ。

 2車を比較すると、ラップタイムはBRZのほうがコンマ数秒ほど速かった。ただコースが変わり、また速度領域やコーナーの特徴が変わるとこの速さは揃ったり、また一方が速くなったりし、必ずしも完全一致したものではないことがわかる。最高到達速度が一緒でもコーナーの走りの特性との差でラップタイムが違っているというのは操る者としては面白さが伝わる部分でもあるのだ。

 ほかにもスタビライザーを中空にしたり、中実にしたり、またその太さもバランスを変えるなど、BRZとGR86は同じクルマなのに異なったチューニングアイテムが所々に施されていて、その結果走りの特徴や個性に分かれているは面白いと感じるところだ。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
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マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
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クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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