もっと普及していいはずのプラグインハイブリッド! 「集合住宅」と「誤認情報」という立ちはだかる壁 (2/2ページ)

普通充電しかできないのがPHEVの落とし穴だった?

 これらの課題に対し、輪番充電といって、限られた充電設備を、EVやPHEV所有者が均等に少しずつ充電をすることができるような設備を展開する事業者がある。一例は、千葉県の船橋総業が扱うEV輪番充電だ。EVロータリーと呼ばれるシステムにより、設備投資を少なく抑えながら複数台数のEVやPHEVへの充電が可能になる。

 そうした手法があるとしても、こうした設備を導入しようという動きが管理組合のなかで起こり、承認されなければ前進することはできない。

 そうした日本の特殊な状況下、EVは、それでも近隣の急速充電器の利用で充電できなくはない。ところが、国産車の一部を除いてPHEVは普通充電口しか車体に設けられていないため、自宅などで普通充電ができなければ、単なるハイブリッド車(HV)でしかない。HVに比べ高価なクルマを買いながら、性能はHV並では、買う意味がない。

 したがって日本自動車輸入組合(JAIA)では、集合住宅への充電設備の充実に行動を起こそうとしている。だが、これは日本のメーカーにとっても他人事ではないとの認識で、自動車工業会など含め、業界団体が総出で取り組むべき課題だ。ところが、国内にはEVが普及すると電力不足になるといった誤認情報を流す人がいる。普通充電を集合住宅にも設置し、戸建て住宅を含め、夜寝ている間に充電するのがEVやPHEV本来の充電の仕方であり、夜間電力料金が安く設定された契約があるように、夜間に充電すれば、日中の電力不足など起きないのである。

 現状では、PHEVの価値は十分活かせないのが日本の実態だ。しかしそれは現状が不都合なだけであり、未来へ向け課題解決してこそ、時代が拓かれるのである。電動化という言葉を曲解し、本質を追求しない姿勢こそが、日本を滅ぼすといえる。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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