EV普及で起こる「急速充電」渋滞! それでも「バッテリーパック交換式」が採用されないワケ (1/2ページ)

この記事をまとめると

■EVへの脱着式バッテリーパックの導入はまだ実用化されていない

■EVのバッテリーパックはプラットフォーム開発に関わるため共有化が難しい

■交換用バッテリーの充電時間や交換・保管場所などまだまだ問題が山積み

充電時間の短縮はできるがそれ以上に大きな問題が存在する

 電気自動車(EV)の充電時間を減らすため、脱着式によるバッテリーパックの交換をすれば短時間で満充電になるとの発想は、1990年代前半からあった。しかし、それから25年ほどたってなお、実用化、事業化の目途が立ったという話は、少なくとも4輪の自動車ではない。

 一方、2輪車では、国内でもメーカー4社の協力により、交換を前提としたバッテリーパックの規格統一の動きがある。

 なぜ、EVのバッテリー交換が実用化できないのか。大きくはふたつの理由がある。

 ひとつは、バッテリーパックはプラットフォームの設計を含め新車企画と深い関係があり、車種や車格の大小、あるいは商品性を含め、自動車メーカーの競争領域に関わるので共通化しにくいことがある。プラットフォームは、安全や操縦安定性などとも関り、生産に際しては工場の設備も関わるので、関係箇所すべてを共通化するのが難しい。

 現段階ではEVの高性能化に際し、バッテリーの温度管理が進み、空冷だけでなく液体冷却もはじまっているので、ロックを外せば簡単にバッテリーパックを降ろせるという構造ではなくなっている。水冷の場合、冷却配管などを外さなければならない。その脱着を、簡単に行えたとしても、脱着を繰り返すことで装着の精度が落ちることにより冷却性能に問題が生じる懸念もあるだろう。

 以上のように、商品性においても、技術的にも、バッテリーパック共通化には難しさがある。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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