カタログの馬力はウソだろ! どう考えても数字以上にパワフルだった「280馬力」時代のクルマとは (1/2ページ)

この記事をまとめると

■280馬力規制はあったもののあの手この手でパワーを押さえ付けてた

■熾烈なパワー競争は後世に語り継がれる名車も生み出した

■280馬力規制があったが故に、チューニング業界も盛り上がった

建前上は「280馬力」だが本当はそれ以上の詐欺スペック

 エンジンの出力を表す単位に「馬力」がある。1馬力とは、炭鉱の排水作業に使われていた馬の動力が基準で、75kgの重さのものを1秒間に1mの割合で引き上げられる能力のこと。この「馬力」という考え方は、蒸気機関の発明で有名なジェームズ・ワットが、蒸気機関の動力性能を比較するために考案したといわれている。

 エコカーの時代になっても、クルマ好きにとって「馬力」は気になる単位であって、500馬力、600馬力のスポーツカーが出てきても、やはり「馬力」は大きいほうが偉いと思っている節がある。メーカーとしても高出力は技術力の証として誇りたい数字でもあるわけだが、なかにはあえて実際の出力よりもカタログ値を低く表示したクルマがある。

 それは2004年まで続いた、国産車の280馬力自主規制時代のクルマたちだ。国産車は1985年まで、カタログのエンジン出力をグロス値で表記していたが、それがネット値に切り替わったあたりから馬力競争がはじまる。

 しかし、ちょうどその1980年代後半から、交通事故死者も急増。「第2次交通戦争」と呼ばれる事態となり、当時の運輸省から馬力競争に釘が刺さり、300馬力で登場するはずだった日産のフェアレディZ(Z32)とインフィニティQ45の国内仕様は280馬力に……。

 この2台、輸出仕様は予定どおり300馬力で販売されたので、国内版はデチューンされていたということになる。

1)日産スカイラインGT-R(R32)

 そしてZ32と同じく、1989年に登場したスカイラインGT-R(R32)もカタログ値は280馬力に。こちらも市販車で300馬力、レース仕様で550馬力以上を目指して開発した、RB26DETTを積んでいたので、名目上は280馬力だったが、ノーマルでも実質的にそれ以上のパワーがあり、マフラーやエアクリーナーを交換しただけで、300馬力近いパワーがすぐに出た。

 同じRB26DETTでも、R33になるとECUが8ビットから16ビットに進化し、トルクも4.2%アップしているので、パワーだって間違いなく280馬力をオーバーしていたはず。


藤田竜太 FUJITA RYUTA

モータリングライター

愛車
日産スカイラインGT-R(R32)/ユーノス・ロードスター(NA6)
趣味
-
好きな有名人
-

新着情報