レーシングドライバーを感動させた2021年の市販車「走りで選ぶ」5台とは (1/2ページ)

この記事をまとめると

◼︎中谷明彦が選ぶ今年の5台を発表

◼︎今年のキーワードは「4WS」だ

◼︎三菱のS-AWCも今年一押しの装備となっている

今年もっとも感動したのは四輪操舵の進化だ

 近年「これは!」と唸らせられる走りのいい新型車に出会うことがめっきり少なくなった。安全性や環境性能を追求するのは必要だが、走りを疎かにされているようなクルマは魅力も半減する。そんな中で「走りの良さ」に感動させられた希有なモデルを5台ピックアップしてみた。

1)メルセデスCクラス(Sクラスも)
2)ランボルギーニ・ウラカンSTO
3)ベントレー・フライングスパー
4)ルノー・メガーヌ(4Control)

 4車。これらのモデルに共通しているのは後輪操舵の「4WS」を採用していることだ。

 かつて日産がR31型スカイラインの通称「鉄仮面」に「HICAS(ハイキャス)」という名で世界初搭載し、その後三菱GTOでも採用されていたが、当時は後輪操舵角が0.5度を超えると制御できず危険な挙動になってしまっていた。ブッシュのコンプライアンスステアを補正するくらいの範囲でしか動かせていなかったのだ。

 だが、近年のモデルは大幅に進化。最大操舵角はCクラスで2.5度。ベントレー・フライングスパーやメルセデスSクラスにいたっては4.5度と大きく操舵させ、それを完璧に制御しているのだ。

 4WSの可能性を急激に高めたのはポルシェ911ターボやランボルギーニ・ウラカン、メルセデスAMG GTなどで、高価なハイパフォーマンススーパーカーにとってなくてはならない装備となった。

 それを大衆車クラスにまで落とし込んで採用に踏み切ったのは仏・ルノーだ。ルノーはメガーヌのスポーツグレードで4WSを採用。素晴らしいハンドリング性能を示していた。ルノー・メガーヌは前輪駆動のFFで後輪を操舵することは後輪の役割を高める意味でも効果的だ。

 コストダウンを図るために後輪左右のタイヤをタイロッドで結び、車体センターにアクチュエーターを配置して左右車輪を同時に制御する。ただリンクの形状や取り回しを工夫して内輪差を上手く吸収することで使用範囲を同相で1度、逆相では2.7度と広範囲で制御し、常用域にまで高めることができたのだ。

 これに対し、メルセデスAMGは後輪2輪駆動。駆動と操舵を両方制御するのは調整が難しかっただろう。ルノー以外の各社のシステムは後輪左右に個別の独立したアクチュエーターを装備し、左右輪を独立制御している。これで制御の自由度は格段に高まり、同相でも逆相でも広範囲で自在に制御できるようになったわけだ。さらにベントレー・フライングスパー、ランボルギーニ・ウラカンなどは4輪駆動で同様のシステムを搭載。難しい4WD車のハンドリング特性を理想的に仕上げ、低速域では逆相に操舵させ旋回半径を格段に小さくすることに成功。ベントレーなどは5mを超える巨体をわずか5.5mで旋回させることができる。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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