やっとオーラで成功! 長い間「泣かず飛ばず」だった国産プレミアムコンパクトの悲哀 (2/2ページ)

1台をベースにさまざまなバリエーションを展開した例も

 元祖クリエイティブムーバー、アイディアや発想に優れたクルマ作りは得意でも、高級車作りはあまり得意ではないとされるホンダにも、かつて「小さな高級車」があった。それが1988年デビューのホンダ・コンチェルト。

 当時、ホンダが提携していた、シビックをベースにローバーと共同開発したコンパクトセダン。とはいえ、エクステリアは地味で、インテリアに英国テイストの高級感は乏しく、ホンダ車っぽくない、という声もあって、わずか4年の短命となった。

「小さな高級車」とは謳っていなかったものの、結果、「小さな高級車」を誕生させたのが、2008年に日欧向けにトヨタから発売されたiQである。全長2985mmと、軽自動車よりショーティなボディに、3+1名のキャビンを構築した、コンセプト優先のマイクロカーだった。

 そのエクステリアデザインはいま見ても斬新で、小さいながらも存在感あるもので、2009年にはGRMN(GAZOO Racing tuned by MN)モデル、2012年にはそのGRMNスーパーチャージャーバージョンも加わり、マニアの間で話題を呼んだ。とはいえ、価格と大きさ、居住性、実用性を考えるとかなりニッチなクルマであり、プレミアムでもあるのだが、販売台数に結びつかなかったのも事実で、2016年までの1代で消滅(極狭駐車場の人には需要ありだが)。

 ただし、そのiQ をベースになんとアストンマーティンがシグネットという車名で発売。内外装のアストンマーティン化はもちろん、パワーユニットまで独自のものを用意し、まさにマイクロプレミアムという希少なクルマを創造したのである。

 ただ、プレミアム化したのはアストンマーティンだから、純国産コンパクトプレミアムと呼べないのが惜しまれる(だからノートオーラが国産車初のプレミアムコンパクトというわけだ)。

 最後に、「小さな高級車」を実現した日産ノートオーラの本気度を浮き彫りするのが、以前のノートにあった上質、高級グレードのメダリストとの比較だ。メダリストのキャッチコピーは「それは、あなたらしさを豊かに彩るプレミアム」。さらに、「今まで存在しなかったプレミアムコンパクトの誕生です」とも謳われていたのである。とはいえ、内外装、装備、パワーユニット、足まわりともに標準のノートと大きく変わるところはなく、乗って、走って、「プレミアム!」と感じさせることはなかったと記憶する。

 ゴールドっぽい専用ボディカラーやメダリストのエンブレムが唯一のプレミアムの証!? ……と云ったら怒られそうだが……。ノートメダリストというグレードが最新の3代目に引き継がれなかったわけで、グレード的には撤退と言えるが、それはもちろん、本気の上質、プレミアムコンパクトのノートオーラの企画、設定が決まっていたからにほかならない。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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