3気筒って「安いクルマ専用」じゃなかった? いま続々拡大してハイパフォーマンス車にまで採用されるワケ (2/2ページ)

もはやデメリットはないに等しい

 一例で言えば、新型8代目のVWゴルフが搭載する999ccのEA211型直列3気筒エンジンは、110馬力/20.4kg-mの性能が与えられている。一般乗用車の出力レベルで判断すれば、110馬力の出力は自然給気の1.8リッター級、20.4kg-mのトルク値は2リッターエンジンを凌ぐ数値である。さらに、ゴルフは13馬力/6.3kg-mの電気モーターを補助動力として持つため、トータルの動力性能は2リッター級に匹敵すると考えてよい。

 ターボの過給効果を必要な条件で使い、なおかつ自分で発電した電気を動力として使う電気モーターの併用方式は、十分な動力性能を確保しつつ、排出ガス削減、省燃費を可能にする理想的なシステムと言ってよいだろう。

 さて、これは世界的な傾向なのだが、かつては1リッター級でも常識化していた4気筒エンジンは影を潜め、現在は1.5〜1.6リッター級でも3気筒エンジンの採用が標準化している。なぜ4気筒ではなく3気筒なのか、ということだが、やはり設計の基本として無駄な要素、省ける対策は徹底して実施したい、という思いが強いからだ。

 では、4気筒と3気筒のメリット、デメリットは何なのか、ということになるが、それぞれ一長一短があり、3気筒側のデメリットがほとんどなかったことから、4気筒の弱点である重く長いことが交替の大きな要因になったということだ。ユニット自体の軽量コンパクト化、さらに車両重量の軽減化は排出ガス対策の点でも効果的な手段で、ターボチャージャーと3気筒の組み合わせによるエンジン排気量の縮小化は、もはや時代の要請と言える内容を備えている。

 3気筒エンジンは、意外と誤解される部分だが、回転バランスでは1次慣性力、2次慣性力もまったく問題なく、唯一残る偶力の問題も、クランクシャフト両端にウェイトを設けることで慣性偶力に変え、エンジンと等速で回るバランスシャフトを設けてキャンセルするか、あるいはバランスウェイトを大きくしてその振動をエンジンマウントで吸収するという対策方法があり、回転バランスはまったく問題になっていない。

 また、過給機を装着した3気筒エンジンのパフォーマンスは、先に紹介したVWの999ccEA211型エンジンの例を見ても明らかだが、トヨタがGRヤリスのRZ/RC用に設定した1618ccのG16E-GTS型3気筒は、272馬力/37.7kg-mと凄まじい。かつての2リッターターボに匹敵する内容で、3気筒によるデメリットはまったく見られない。

 小排気量エンジンは、絶対トルクが細い分だけ低速域からの立ち上がり加速で不満を覚えることもあるが、これは4気筒でも3気筒でも同じことだ。むしろ最新の3気筒ターボは、低速域から過給効果が得られ、まったく違和感のない運転感覚で走らせることができる。さらに厳密に見れば、アイドリング領域から過給効果が得られるまでのわずかな間、力不足を感じることもあるが、これは3気筒エンジンだからということではなく、小排気量エンジン、あるいはターボの過給制御、さらには電気モーター併有の有無に起因する問題である。

 かつては、異端児のように見られていた3気筒エンジンだが、現代的な視点から自動車のパワーユニットとして捉えた場合、軽量コンパクト化が可能なシリンダーレイアウトとして、小排気量車では不可欠な方式に立場を代えている。


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