クルマの飛び出しも人の飛び出しも避けて停まる! 日産の最新安全技術が人間じゃ不可能レベルの能力だった (2/2ページ)

次世代LiDAR機能は危険回避だけでなく自動運転でも必須だ

 異常を回避する機能は従来の運転支援と同様に、電動パワーステアリングを操作し、また前方の障害物の手前で停止するのは、衝突被害軽減ブレーキをより高度にして完全停止させる機能を生かしたものだ。

 つまり、これまでのプロパイロットシリーズが持っている運転支援機能に次世代LiDARを装着し、アップデートさせることで高度に活用することができると見込まれているのである。

 こうして緊急回避性能が確実なものにならないと、自動運転自体が安全なものにならず、目的地へ到着する手前で事故が起こってしまっては元も子もないという発想によるのである。また、自動運転機能に関してもこの次世代LiDARシステムを使い、より道路周辺環境の認知が正確に可能となる。

 たとえば、従来の自動運転は、ホテルを目的地に設定すると、そのホテルの入り口まではナビゲーション機能との協調で到着することができるが、その敷地のなかに入って私道を走って玄関前に到着させることは、ドライバーが自ら運転して行わなければならなかった。しかし、次世代LiDARでは、玄関前の位置情報を入力することで、一般道から施設内に入ってからは路肩や車線など、また人の動きや標識、ルート方向案内などを認知し、それに沿って正確に玄関前の到着指定位置まで自動で運転してくれる。

 このように次世代LiDAR機能は緊急回避や安全性を高めるだけでなく、より自動運転を完全なものにするためにも必要な装置といえるのである。

 今回披露されたシステムは、その機能から予測される完璧な状態に対して、まだ50%程度の完成度だという。だが、日産自動車は2025年前後を目処に商品化できるレベルにまで完成度を高めることを目標としているという。

 今後、電動車、あるいは電気自動車(BEV)が増える傾向が予測され、電気自動車になることにより、駆動力やブレーキ制御などが行いやすくなることから、次世代LiDARシステムを搭載した自動運転支援機能の装着も行いやすくなる。一方で、これを後付け装置として装着することは難しく、基本的にはクルマのハーネス部分に多くの取りまわし配線が必要となるので、標準設定することが重要となる。

 システムは、前方方向に従来の多眼カメラやレーダーソナー、次世代LiDARシステムを装備することで構成されている。

 この次世代LiDARは、ある波長を持った光を発射し、その反射を機械が読み取って判別することで認知している。したがって、西日などの人間の目には判別しづらいような状況でも、LiDARの発する光の反射があれば、それを正しく認知して判別可能だという。また、雪国で多くみられるホワイトアウトのような場面では、精度こそ低下するものの、氷の粒が通過するたびに読み取れる隙間の部分を上手く演算してひとつの画像を構成することが可能だという。この粒子が細かくなり密度が高まってしまうと判別が非常に難しくなるのは人の目と同じだが、現状でも人間の視力よりもはるかに検知機能として優れているという。

 自動運転に関しては、2012年ごろから日産は、緊急回避や自動停止ブレーキなどを中心にかなり高い完成度をアピールしていた。その結果、プロパイロット2.0に見られるような「レベル2」の自動運転を市場投入することが可能となっていた。

 10年かかった割には、いささか進歩の度合が低いと言わざるを得ないが、この間に地球温暖化の問題で二酸化炭素の排出を抑える処置、またそれに伴う電動化の方に開発のプライオリティが置かれたからといえるだろう。

 電動化に舵を切ったことにより、今後は自動運転に対しても開発のペースを上げていくことが出来るようになると期待されている。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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