シーマにフーガにレジェンドなどが消え国産セダンの危機! レーシングドライバーが「セダン不要説」に異を唱えるワケ (2/2ページ)

運転の愉しさや運動性能の高さを重視するならセダンに回帰すべき

 自動車社会が高速化するにつれ、高い重心位置は矯正されていく。速度無制限区間のあるアウトバーンを擁するドイツでは、セダンやスポーツカーがいまでも主流なのは、車高の高いクルマの運動性能が高速走行に適していないと知っているからだ。

 SUVに乗ったあとにセダンに乗り換えると、まるでスポーツカーに乗り換えたような安定感、安心感がありホッとする。自信を持ってステアリングを切り込み、ピッチングやロールを適度に感じながらヨーコントロールするドライビングダイナミクスがある。

 室内の広さや悪路走破性も大事だが、ドライバーとして運転の愉しさ、運動性能の高さを重視するなら、やはりセダンに戻って来るべきだろう。

 ミニバン時代をともに過ごした子供たちも大きくなって独立し、一緒にドライブする機会も減ってくる。年に一度の家族旅行だけのためならレンタカーで十分だ。運転する歓びを感じ、また高齢となって運転は人任せ後席でのんびり快適に移動するとしても、高級セダンなら満足度が高いはず。

 ではセダンならなんでもいいか、というとそうではない。自動車メーカーにも常に意見しているのだが、4つのドアを持たせるのなら、後席の居住性や使い勝手をもっと重要視すべきだ。前席にはシートヒーターが備わっているのに、後席にはない。前席はリクライニングするのに後席は固定。前席は独立エアコンやUSBコネクターがあるのに後席にはない。もとより後席の足もとが窮屈で足を伸ばせないのは、セダンとして本末転倒といえる。

 後席が前席より快適で居心地が良ければ、SUVからセダン回帰を望むユーザーの心の琴線に振れるはずだ。

 後席装備の充実を求めるなら高級車という一択では意味がない。大衆車クラスでも4つドアが備わっているなら、ニーズは高級車と変わらない。この辺の考え方は中国では実践されている。中国ではセダンでもあらゆるモデルでロングホイールベース化されていて後席が広く快適、装備も充実している。いま、日本には後席も満足できるセダンがほとんどない。レクサスLSロングくらいしか見当が付かない。カローラやカムリといったコンパクトやミドルクラスでも、後席の要件を満たし、走りもよければセダンに乗る、回帰する価値を十分に見出せるだろう。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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