オヤジセダンから軽自動車まで! 「ニュルブルクリンク」で走りを鍛えた「意外な」クルマ4選 (1/2ページ)

過酷なコースだからこそクルマの弱点がわかりやすい

「スポーツカーの聖地」と言われるいっぽうで、「グリーンヘル(緑の地獄)」という異名を持つのがドイツにあるサーキットのニュルブルクリンクだ。日本のクルマ好きの間では「ニュル」と呼ばれることも多い。

 その特徴はふたつ。まず全長が長いこと。1927年に作られた「北コース」の全長はなんと全長2万832m。日本で規模の大きなサーキットといえば富士スピードウェイや鈴鹿サーキットだが、その全長が4563mと5807mといえば、20㎞を超えるコース長がいかに常識を超えたものか理解できるだろう。

 もうひとつは過酷なこと。山岳地帯を切り開いて作られたコースはアップダウンが多く、高低差はなんと300m。さらに182ものコーナー(テクニカルと言われる鈴鹿サーキットでも18ヵ所しかない)があり、コースわきにエスケープゾーンがない場所も多くまるで峠道。そのうえ、超高速域からの先にタイトコーナーという危険極まりないスポットも多数存在する、あたかも極限に挑戦するかのようなサーキットである。森のなかにあると同時にあまりの過酷さゆえに「緑の地獄」と呼ばれるのだ。

 そんなニュルブルクリンクは、自動車メーカーが新車開発テストをおこなう場所としても有名である。ポルシェをはじめメルセデス・ベンツやBMW、アウディなどドイツの高性能車メーカーはもちろん、日本のメーカーでも日産がGT-Rなどを持ち込んで性能を煮詰め、トヨタも多くのモデルをここで鍛えているのは有名な話だ。過酷なコースだからこそ、クルマのウィークポイントが露呈しやすく、そこを強化することで鍛え上げられるのである。

 しかし、そんなニュルで開発されるのは日欧のスポーツカーや高性能車だけに限らない。今回は、そんなニュルで開発テストをおこなった意外なモデルを紹介しよう。

1)ダッジ・バイパー

 バイパーと言えば、かつてアメリカで生産されていた超高性能スポーツカー。OHVにこだわるV10エンジンの搭載が特徴で、最終モデルでは排気量が8.4リッターまで拡大されて最高出力は649馬力、最大トルク813Nmを誇った。

 そんなバイパーといえば、多くの人はパワー自慢の直線番長でジャジャ馬とイメージするかもしれない。しかし実際には、わずか1500gと軽量なボディとの組み合わせで運動性能も抜群。新しくなるほど戦闘力の高いコーナリングマシンへと進化し、ニュルブルクリンクでもテストを実施。さらに量産市販車最速を狙ったタイムアタックも行っている。

 2017年のアタックでは高性能仕様のバイパーACRが7分1秒30というタイムを記録。量産市販車最速記録樹立とはならなかったものの、このタイムはR35型日産GT-R NISMOの最速タイムを上まわるほどの好タイムなのだ。ハイテクをほとんど持たない後輪駆動車でこのタイムは驚異的としか言いようがない。

2)キャデラック

 キャデラックといえば大統領の公用車として使われるほど格式の高い、アメリカを代表するプレミアムブランド。そして日本人の多くは「フカフカのシートでユルい乗り心地」をイメージするかもしれない。しかし、それは今のキャデラックには当てはまらない。

 セダンやクーペには「Vシリーズ」と呼ばれる超高性能モデルを用意し、走り自慢であるドイツのプレミアムブランドに真っ向勝負を挑んでいるのだ。そんなVシリーズだけでなく、「CTS」「CT4」「CT5」などセダン系は通常モデルもニュルでのテストを敢行(2008年には「CTS-V」がタイムアタックし当時の4ドアサルーンの最速記録を樹立した)。

 余談だが、今年9月に設定された「CT4-V」と「CT5-V」の超高性能バージョンとなる「ブラックウイング」にはマニュアルギヤボックスが用意されているのだから驚きだ。


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