エンジン車存続の切り札と期待も課題は多数! メーカーも注目する「バイオ燃料」の行く末 (2/2ページ)

まずは物流などの限定的な分野での活用から

 バイオ燃料の多くは、トウモロコシやサトウキビ、またディーゼル用として菜種油などを原料とする。したがって、それらを耕作する土地が必要になる。燃料へ加工するための設備も必要だ。もちろん原油も、精製してガソリンや軽油、重油などに分類する設備を必要とするが、いまバイオ燃料用の設備を整えるには新たな投資が必要になる。バイオ燃料を成長産業とみるなら、それもありだろう。

 しかし、燃料用の穀物は栽培するために広大な耕作地が必要だ。食料自給率100%前後の地域ならまだしも、40%を下まわる日本では、食料か燃料かで議論が分かれる。ブラジルでは、トウモロコシ栽培のため熱帯雨林が伐採されてきた。優先すべきは何か、見極めることが必要だ。

 藻を活用したバイオ燃料は、生産性が高いとされる。耕作地も必要ない。しかし、原価が高めの状況でもある。生育管理など設備に投資が必要だ。量産できるとしても、ディーゼル用やジェットエンジン用などが主体で、ガソリン乗用車の走行性能を満たす燃料にまで至っていない。そこでレースで鍛えようとする動きも出てきた。

 廃油の利用や、穀物、あるいは藻などによる代替燃料は、今後も研究され、生まれてくるだろう。しかし、技術としてできることと消費者が使えるようになることの間には、大きな隔たりがある。世界13億台の自動車に使える量や価格を実現できるかわからない。

 部分的に利用できるなら取り組む意味はある。それはブラジルでの地産地消のような、原料の生産、燃料製造の近隣で活用する姿だろう。また、航空機や船舶、汎用機器、あるいは物流など、電動化での対処が厳しいと考えられる分野でまずは活かされるはずだ。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

新着情報