かつて栄華を誇った「直6エンジン」が復活の兆し! 一度消えた技術が再注目される理由 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■直6やV8などのマルチシリンダーエンジンは高性能の証としてもてはやされた

■高性能よりも好燃費であることが求められて直6はその立場を追われた

■技術の進歩により燃費向上策としても直6が見直されつつある

いまや直6エンジンは消えつつある

 自家用車エンジンの代表的な形式といえば、今もかつても直列4気筒エンジンだろう。高級車になると直列6気筒やV型6気筒が搭載され、さらに上級モデルにはV型8気筒や12気筒などマルチシリンダー化されていたものだ。大排気量のアメ車はV8、スポーティな欧州車は直6が当たり前といえる時代が長く続いた。国産車も欧米車に追いつけ追い越せとばかりに直6やV8搭載車が多くラインアップされ、一世を風靡したものだ。

 それがいまや「いつかはクラウン」と言われた国産高級車の代名詞的存在のクラウンでさえ2リッター直4ターボや2.5リッターの直4+HV(ハイブリッド)が主流で、一時はV6搭載車がカタログ落ちした時期もあった。ましてや直6エンジン自体、世界一の販売台数を誇るトヨタ車のラインアップからも消えつつある。

 直6エンジンが主流だった時代は、欧州のメルセデス・ベンツやBMWが直6搭載モデルの人気を牽引した。とくにBMWの直6ユニットは、絹のようにしなやかでスムースにまわるエンジン回転特性から「シルキーシックス」と形容され、高く評価された。

 国産モデルではトヨタ・クラウンはもとよりセリカXX(ダブルエックス)、初代スープラ、ソアラなどスペシャルティカーを中心に高性能直6ユニットが搭載され人気を博したものだ。

 だが、現代は高性能であることよりも好燃費であることを優先することを求めている。とくにトヨタがハイブリッド(HV)を開発すると、その圧倒的な好燃費を前に直6の存在感は薄らいでいってしまうことになる。

 直6ユニットはクランクシャフト1回転当たり3回の爆発行程があり、完全バランスの回転特性で振動が少ない。それゆえ高級車に搭載されることが多かったのだが、シリンダー数が多い分、部品点数が増え重量も増す。また、エンジン全長も長くなるのでクランクシャフトを高回転でまわすのが難しく、横置き搭載が難しい。コストパフォーマンスに優れるFF車が主流となっていくなかで、6気筒はエンジン全長が短いV型に置き換わり、直6は姿を消して行くことになるのである。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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