【試乗】いまや貴重な純ガソリンエンジンモデル! マイチェンした新型VWポロの絶妙な「痒いところに手が届く感」 (2/2ページ)

軽快感のあるハンドリングはフォルクスワーゲンらしい乗り味

 一方、エンジンはミラーサイクルで、現行「ゴルフ」など、マイルドハイブリッド化されたモデルのエンジンと同じような燃焼方式となっている。トヨタのハイブリッドモデルなど、ミラーサイクル化しているクルマも多くなっているが、今回のポロは第一段階としてミラーサイクルのガソリンエンジンを採用。今後、たとえばこれをベースにマイルドハイブリッド化するということも考えられるだろう。

 燃費性能は、ミラーサイクルエンジンを搭載したことによってJC08モードは数値的には若干落ちているものの、WLTCモードにおいては向上している。

 今回試乗したグレードはRラインだったのだが、17インチタイヤを装着したことによって軽快感のあるハンドリングが得られている。実際、電動化モーターなどの重たい重量物がない3気筒エンジンであり、ノーズが軽く、クルマ全体も軽快でアジリティに優れている。ライントレース性も自由自在で、フォルクスワーゲンが従来もっている乗り味が生かされている印象だ。

 サスペンションは少し硬い設定でロールが少なく、フロントはストラット、リヤはトレーリングアームということで、非常に熟成されたサスペンションだといえる。Rライン専用サスペンションは、コツコツとした乗り心地こそあるが決して不快なものではなく、収斂に優れていて路面のコンディションをドライバーによく伝えながらも不快感は残さないという乗り味に仕上げられている。

 一方で、車体のコンパクトさゆえに最小回転半径は5.1mと小さいのだが、新型「ゴルフ」も同じ5.1mとなっている。新型ゴルフはサスペンションのリンク機構に新しい工夫がなされ、大きな転舵角度を実現して5.1mを達成しているのに対し、ポロのフロントサスペンションは、まだコンベンショナルな仕様なので、車体の外寸から感じるほど小まわり性に優れているとは言い難い。

 今回のマイナーチェンジでは、主に外装のデザイン、フロントグリルにピンストライプ状のLEDをインサートし、見た目の印象でワイド感を持たせてスポーティに仕上げられ。リヤのコンビネーションランプもデザインが新しくなっており、より近代的で高級感とスポーティさ、存在感を引き立たせるデザインになっているといえるだろう。

 ただ、リヤバンパー下にある左右分割排気管口はイミテーションで、実際にはほかのポロと同様に排気管はバンパーの内部に隠れていて外から見えない。排気管口を左右分割排気管口っぽく見せることでスポーティグレードであることを強調している訳だが、国産車によく見られたような手法をスポーティグレードであるはずのRラインにおいても取らざるを得なくなってきたのかと少々寂しさを感じた。

 ただし、現行モデルの2リッターエンジンを搭載するポロGTIは、2本出し排気管口のエキゾーストを持っており、本国でデビューしている新型ポロGTIも本来のエキゾーストを備えたモデルとなっているので、こちらには大いに期待したい。

 エンジンは6500回転まで吹き上がるが、決してシャープな回転特性ではなく、高回転域ではトルクの落ち込みも感じる。中低速域ではフラットなトルク感とスムースで振動の少ない滑らかな乗り味である。ただ、エンジンサウンドは3気筒特有のもので、いささか物足りなさを感じてしまう。

 電動モデルが増える中で純ガソリンエンジン仕様を選択できる機会は今後限られてくると思うので、そういう意味で新型ポロは、最新技術で仕上げられた純ガソリンエンジンモデルという点にも価値を見出すことができるかもしれない。

 なお、右ハンドル仕様のポロは南アフリカで生産されており、昨今の半導体不足の影響で運転機能アシストの一部をレスオプションにするなどして納期を早めるという販売手法も今回から取り入れられたという。日本の道路事情に適したボディサイズ感、そして実用性の高い使い勝手、キビキビとして軽快な走りなど、ポロは価格設定も併せて魅力的な存在であり、今後もゴルフと並んでフォルクスワーゲンの主要モデルであり続けるといえるのではないだろうか。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
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海外巡り
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