「押しづらい」「階層が深くて複雑」の声があってもタッチパネルが増加中! いまクルマの「物理スイッチ」が減らざるを得ない理由 (2/2ページ)

OTAによる機能の発展がこれからの基本

 もうひとつ、OTAというトレンドがタッチパネル操作を加速させているという見方もできる。

 OTAというのはオン・ジ・エアーの略称で、自動車業界では主に無線通信技術を利用して機能をアップデートさせることを指している。最近ではリコールにおいても制御プログラムの書き換えで対応するような事案も増えているが、OTAが普及すればいちいち販売店や整備工場に行かなくとも自動的にアップデートして問題解決することが可能になるのだ。

 そんなOTAはリコールに関わるような機能面だけでなく、エンターテインメントや快適装備のアップデートにも利用することが可能だ。

 たとえば、OTAによってオーディオ機能を拡充させることができるとして、もしオーディオの操作系がすべて物理スイッチとなっていたら、新たな機能を追加することは難しい。しかしディスプレイに操作系を表示させる仕組みであれば、操作パネルの表示画面も含めてアップデートしてしまえば新機能は問題なく追加できることになる。

 先進運転支援システムの機能追加についても、ディスプレイ操作を基本とすれば、OTAによるアップデートで新機能を追加することは容易となるだろう。

 もちろん、保安基準との兼ね合いになるので物理スイッチとして残しておくべき機能はなくならないだろうが、物理スイッチの制限を受けないことのほうがアップデート全般において有利なのは間違いない。

 物理スイッチを減らし、ディスプレイサイズを可能な限り大きくするという昨今のトレンドは、そうした未来への期待を高めるものであるし、デザイントレンドとしてはOTAによるアップデートへの対応を意識した手法であるともいえる。

 もっとも、いつまでもディスプレイサイズが拡大するとは限らない。すでに普及が進んでいるように音声コントロールというのも自動車ユーザーインターフェース(UI)としては広がりつつあるからだ。

 すでにナビゲーションの目的地は音声だけで設定できるようになっているし、道案内にしても音声だけで行なうことができる時代だ(※パイオニアNP1)。

 一部のクルマでは、エアコンの温度調節にしても「暑い」、「寒い」という抽象的な表現でコントロールできるようになっている。物理スイッチのほうが使いやすいとか言っている時代ではない。物理スイッチだろうがディスプレイのタッチだろうが、操作自体が不要といえる時代になっている。

 レベル3以上の自動運転時においてエンターテインメントを楽しむというニーズがあるためコクピットから大型ディスプレイが消えてしまうことはないだろうが、ディスプレイでの操作が主流という考え方自体が古いとさえいえる。

 それほどのスピード感で自動車のUIは進化しているのだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
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