日本車史上「最高傑作」に異論なし! 見た目も音も「芸術」なら性能も「極上」だったトヨタ2000GT (2/2ページ)

映画への出演が知名度を飛躍的に高めて伝説と化した

 日本を代表するスポーツカーというひとつの象徴として、英国映画の007で主役が乗るボンドカーに選ばれた(劇中では日本の女性エージェントの愛車だった)ことも、トヨタ2000GTの価値の大きさを表している。

 かつて、旧車という扱いでの試乗を少しできたことは、永年憧れてきた私の何よりの思い出でもある。旧車であり、借り物でもあるため、全速力での走行ではなかった。だが、直列6気筒エンジンの力強く、滑らかな加速には、独特の味わいがあった。

 その排気音は管楽器を奏でるようにまろやかで耳にやさしく、心に響いた。クルマとかスポーツカーとかいうより、芸術作品に触れたような感触がいまも脳裏に残る。

 レースにも出場したが、1966年には国際的な速度記録に挑戦し、連続して6時間~72時間(給油やドライバー交代での停車を含む)、走行距離では2000km~1万マイル(約1万6000km)など、13の項目で時速200km以上の平均速度を達成した。人の感性に訴えかける価値とは別に、まさにグランド・ツーリングの名にふさわしい、耐久性を踏まえた高速走行性能を明らかにするための挑戦だった。

 1955年に、初代のトヨペット・クラウンが誕生してから十数年後に、時速200km以上の平均速度を長時間維持して走り続ける技術を世界に示した点においても、トヨタ2000GTの偉大な価値を実感させるのである。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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