いまドル建てで極端な円安! 輸出産業の「自動車業界には追い風」との通説はイマドキ通用しない!? (2/2ページ)

トヨタの想定為替レートは1ドル115円

 はたして1ドル136円という為替レートは、自動車メーカーにとって、どのくらいプラスになっているのだろうか。たとえば、トヨタの決算資料によると2023年3月期(2022年度)における想定為替レートは1ドル115円となっている。

 仮に、そのレートにおいて北米市場で1兆円の営業利益が見込めていたとしよう。ドル建てで見込める利益が変わらないとすると、1ドル136円で計算すると営業利益は1.2兆円に迫ることになる。為替レートの違いだけで円建てでの利益が2割増しになるのだ。

 そのため円安は自動車業界の追い風になる……というのが従来の定説だった。

 ただし、今回はそう単純な話とはいえない。為替レートとは別の話になるが、建設関係の資材が世界的に値上がりしていることが話題となっている。

 自動車業界といのは大きく見ると海外から材料を輸入して、それを加工して自動車にすることで付加価値を生み出し、輸出して儲けているといえる。ご存じのようにクルマの売価というのは頻繫に動かすことはできないが、資源の価格というのは非常に短いスパンで変動する。しかも円安ということは資材の購買費用は増えている。

 現時点においては素材の価格変動と為替レートの円安化による負担増を、輸出における為替メリットでカバーしきれていないというのが自動車業界全体の傾向といえるだろう。

 さらにいえば、国産系の自動車メーカーの多くが主要マーケットにおける現地生産化を進めている。日本に本社のある企業なので決算の数字をみると為替レートによって数字がよくなっているように見えても、実質的な影響は少ないという見方もできる。

 そもそも生産や開発を海外で進めるというビジネスモデルは円高時には有利に働くために、自動車メーカーとしてはリスクを抑えるためには当たり前の方向である。その意味でも異次元の円安だからといって、それほど円安のプラス面を享受できていないのが実態だったりもするのだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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