「カッコよくしてやる」初代オデッセイ開発者の意地が炸裂! ホンダのミニバンが「3列目席の床下収納」を続けるワケ (2/2ページ)

格納時のスッキリとした車内と広い空間の実現がメリット

 さて、新型ステップワゴンである。これまでも3列目席の格納方式は床下格納を貫いてきたわけだが、改めて6代目もなぜ、床下格納式を採用したのか、開発陣に聞いてみた。その解答は明快だ。「6代目は2列目席ロングスライド機構(標準スライド610mm。中寄せロングスライド865mm!)を備えているため、2列目席を一番後ろまでスライドさせた際に、少しでも気になるような空間づくりはしたくないと考えた結果、3列目席の床下格納方式を踏襲することにした」。

 なるほどである。ロングスライドと3列目席左右跳ね上げ式は、格納したシートの圧迫感、リヤクォーターウインドウ部分の抜け感という意味でも、うっとおしく感じられ、相性はよくなさそうだ。

 そして、「ミニバンといっても、ユーザーが常時、3列目席まで使用したフル乗車をするわけではない。3列目席が不要な場面でラゲッジルームを拡大したり、2列目席をロングスライドさせた広々空間を味わう使い方もある。3列目席を使う人にも、3列目席を格納して使う人のどちらにも満足してもらえるトータルバランスにおいて、これまで通りの床下格納方式という選択をした」ということなのだそうだ。

 ノア&ヴォクシーやセレナは床下収納を重視。一方、ステップワゴンやオデッセイは3列目席格納時でのスッキリとした室内空間、大容量ワゴン化を優先した、ということだろう。走りにこだわるホンダだけに、重い3列目席を床下収納することで、背の高いクルマの重心を下げる効果もあるかも知れない……(筆者の勝手な想像)。

 オデッセイ、ステップワゴンが初代から3列目席床下格納方式を採用している理由がおわかりいただけたと思うが、まてよ、Sクラスミニバンのフリードだけ当てはまらない。そう、フリードの3列目席は左右跳ね上げ式なのである。

 が、その理由も分かりやすい。「フリードクラスの3列目席をラゲッジスペースの床下に格納しようとすると、リヤオーバーハングの拡大が避けられず、ホンダ独自のユーザー調査による全長目標値を超えてしまい、結果、ステップワゴンと変わらない骨格、全長になってしまうから」というわけだ。

「フリードが選ばれる理由のひとつが5ナンバーサイズかつ取りまわし性のよさであり、3列目席の床下格納方式よりそちらを優先した」のである。ライバルのSクラスミニバンの3列目席格納は左右跳ね上げ式ではないものの、2列目席下に滑り込ませる方式であり、その特殊な格納方法に至ったのは同様の理由によるものだと推測できる。

 そう、ホンダの元祖クリエイティブムーバーの発想は、初代オデッセイ以来、6代目ステップワゴンにも見事に貫かれているのである。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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