製品精度の高い今ではもはや不要か? 海外では「ない」ケースもあるクルマの「完成車検査」制度

製品精度の高い今ではもはや不要か? 海外では「ない」ケースもあるクルマの「完成車検査」制度

この記事をまとめると

■日本では新車が安全基準を満たしているかを確認する完成車検査が行われている

■自動化によって生産精度が高まった現在、海外の工場では完成車検査は行われていない場合もある

■製品検査のあるべき姿も、時代とともに進化する必要がある

海外の工場では実施していないケースもある完成車検査

 4年ほど前になるが、生産工場で出荷前に行われる完成車検査の工程で、資格を持たない従業員が担当していた自動車メーカーがあって問題となった。これを受け、国土交通省は、自動車型式指定規則を改定した。

 完成車検査とは、新車の製造工程の最後に、出来上がった新車が国の定める安全基準を満たしているかを確認する工程だ。内容は、外観の仕上がり、水漏れの有無、排出ガス漏れの有無、ボルトのゆるみの有無、速度計の正確さ、ブレーキ性能を満たしているか、排出ガス基準を満たしているかなど、100項目におよぶとされる。

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 この仕事に従事するには資格が必要だ。車検の検査を行うのと同じ自動車検査員としての資格取得が求められる。車検も、走行性能を確認するのではなく、その時点で国の安全基準に適合した状態であるかの点検であるため、新車の出荷時の完成車検査も同じ知見や資格を持つ人が携わる必要があるということだ。

 資格の取得に際しては、整備士の2級以上の資格をまず持っていること。そして、整備主任の業務経験を経て、研修や講習を受け、試験に合格する必要がある。国家試験のなかでは比較的合格率の高い資格といわれているが、完成車検査で不具合を見逃せば、利用者のみならず、そのクルマが公道を走ることで周囲の交通にも影響を及ぼしかねないので、確かな能力を備えた人が従事することが大切だ。

 もちろん、近年の生産工場は自動化が進み、検査の工程も傍から見るとシステム化され、完成車検査も容易に進められているように感じることがある。だが、鍛えられた人間の目や感触はなお、自動機器以上の精度や感度を持つのであり、新車としての性能や機能の高さとともに、検査が確実かつ安全に機能する最後の砦として、責務は大きいといえる。

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 一方、資格を持たない従業員による完成車検査の問題が持ち上がったとき、海外の同じ自動車メーカーの工場では、完成車検査は行われていないとの報道があった。

 今日の自動車製造工程では、一台が完成する前に、個別の工程で点検が実施されている。作業の様子や、部品の取り付けの正確さなどがカメラで撮影され、何か不具合が生じた際には、あとで検証できる仕組みもある。

 つまり、基本的には完成車検査の前の段階で、かなり高い精度によって新車が製造される仕組みが採り入れられているのだ。逆に、完成車検査の段階で不具合が生じるようでは、その手直しに余計な時間と手間を要する。事前に点検しながら次の工程へ進むほうが、生産の効率化にもなる。

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 製造現場での生産精度を高め、効率を向上させる生産方式が導入されている現在、製品検査のあるべき姿も、時代とともに進化する必要があるのではないか。

名前:
御堀直嗣
肩書き:
フリーランスライター/2022-2023日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
現在の愛車:
2009年型トヨタ・プリウス
趣味:
乗馬、読書
好きな有名人:
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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