史上最悪のクルマにも選ばれた「スポーツカー」!? もはやジョークとしか思えないピール・トライデントの本気っぷり (2/2ページ)

希少性によってプレミア化して価格は数千倍に跳ね上がった

 マイクロカー全般に言えることですが、一般的なクルマとは隔世しているため、インプレッションは注意深く読み解くべきでしょう。たとえば、トライデントはアメリカの雑誌「Times」によって「史上最悪のクルマ50選」にランクイン。理由としては、直射日光を遮ることのないキャノピーによって室内は過酷な環境になるとのこと。キャノピーには開閉できる窓はなく、かろうじて車体ベンチレーション用小窓がありますが、どちらかといえばドライバーの手信号むけに装備されたもの。なにしろ、P50もトライデントも方向指示器(ウインカー)はおろか、ブレーキランプさえ備えていませんからね。

 そこにふたりが肩を並べて乗車していれば、厳しい環境は容易に想像がつくというもの。ですが、まさかトライデントで大陸横断を試みる猛者もおりますまい。適度にクルマを止めて、キャノピーをガバ開けすればいいだけのこと。もっとも、タイムズ誌のセレクトも多分にジョークを含んだものなので、笑いながら読めばいいのでしょう。

 一方でジョークとして笑えないのが、トライデントの流通価格。おそらく当時は数万円(P50は約3万円)だったものが、希少性の高さからか8万ドルから10万ドルで取引されているのです。マイクロカー愛好家は少なくないとはいえ、驚かずにはいられませんよね。

 それでも手に入れたいというジョーク好きな方、あるいはマイクロカーに乗ってみたいという奇特な方のために、P50もこちらのトライデントもリプロダクションされています。エンジンやミッションがアップデートされているものの、スタイルや乗り味に変わるところはないでしょう。また、EV化されたタイプもラインアップされているので、それはそれで味わいある仕上がりとなっているはず。

 こうしたクルマをリプロダクションする方だけでなく、それを手に入れようとする方々はジョーク好きというより、ユーモアを解する余裕、品格がおありだと羨ましい限りです。世界中がこんなジョークじみたクルマでいっぱいになったら、それこそ自動運転とかSDGとかいらなくなりそうなんですがね(もちろん、これもジョークです)。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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三菱パジェロミニ/ビューエルXB12R/KTM 690SMC
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