マイナーチェンジのたびに走りが進化するクルマ! なぜ最初から完全体で出さないのか? (2/2ページ)

登場時に改良の余地を残しているわけではない

 生産性向上により工数を増やす余地が生まれたり、溶接ロボットの性能がアップしたりすれば、「スポット増し」と呼ばれる溶接個所を増やすという改良も可能となる。新車登場時には出来なかったことを、マイナーチェンジで取り入れているという背景には、こうした生産技術の進化もあったりするのだ。

 ちなみに、量産していく中で「この溶接は不要じゃね?」となれば、省くこともあり得る。自動車メーカーにとってオーバークオリティは正義ではなくカイゼンすべき点といえるからだ。ただし、そうして絞り出された余地は、裏を返せば前述したようにマイナーチェンジでの進化に使われることもあるのだから必要なカイゼンといえる。

 そもそも工程を増やしておけば最初からスポット増しくらいできるのでは? と思うかもしれないが、それはそれで難しい。

 なぜなら現在の生産現場では混流生産が主流となっているからだ。ひとつの生産ラインでさまざまなモデルを作る混流生産においては、特定の車種だけ工数を増やすというのは現実的ではない。

 仮に、組み立てラインが50工程で組まれていれば、どの車種においても50工程で作れるようにしておかないと基本的にはいけない。特定の車種だけ60工程にするというのはダメなのだ。

 多少のやり繰りはできるのだが、それでもひとつの工程を1分前後に設定して、同じスピードでラインを動かしているわけだから、全体として合わせる必要がある。

 結果として、生産現場におけるカイゼンと技術の進化がマイナーチェンジでの車両の進化につながるということになる。

 けっして自動車メーカーはマイナーチェンジでの進化を見込んで新車時に改良の余地を残しているわけではない。そのときそのときでベストを尽くしているが、生産技術の進化により生まれた余地を利用して、ハードウェアを進化させている面があることも理解すべきだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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