ホンダ車らしからぬデザインだと賛否両論! 話題の新型SUV「ZR-V」のルックスに隠された狙い (2/2ページ)

世界市場を見越したオールランダーだからこそのデザイン

大きく押し出し感があり、少しのクセを持たせる

 ZR-Vの造形テーマは「強い塊感」で、シンプルな一つの球体のように、どこから見てもテンションを感じるスタイルを目指したとされます。その視点で見ると、サイド面だけでなく、前後を含めたボディ全体にグラマラスな造形を感じます。ただし、このボリューム感は「締まりがないボディ」と思わせる危険性があります。

 フロントは、突き出した「おちょぼ口」のグリルと奥まったランプの配置が特徴的で、さらにグリル内のタテ桟は動物が牙を剥き出したよう。ここはまさに異彩=個性の見せ所なのですが、多くのユーザーにとっては少々強すぎる「クセ」なのかもしれません。

 サイド面は、ショルダーの豊かな張りがまさに「テンション」を感じさせ、大きさと同時におおらかさも滲み出ています。ただ、横長のランプを大きく回り込ませたリヤビューも含め、少々キレがなくボンヤリ見えてしまうかもしれません。

シンプルな表現を基本としつつ、市場の要求を盛り込む

 こうして多くのユーザーが「なぜこのデザイン?」と感じているわけですが、では、ZR-Vのスタイリングが「いまのホンダデザインから外れているのか?」と問われれば、じつはそうとも言い切れないのです。

 たしかに最近のホンダはシンプル路線なのですが、どれもがHonda eやステップワゴンのような方向なのではなく、シンプルさを基本としながらも、じつは各市場向けに独自のテイストを与えているのが特徴なのです。

 そのいい例が新しい「シビック」でしょう。先代のガンダム風なゴテゴテ感は払拭されましたが、それでも日本市場から見れば若干ドヨンとした緩さを感じさせます。しかし、それは基本のシンプルさと北米市場のニーズをミックスさせた意図的なデザインなのです。

 そうした視点でもう一度ZR-Vを見ると、球体をイメージしたボディのシンプルさや、個性を与えたフロントの見え方が少し変わってくるのではないでしょうか。いえ、もちろんここから先にはユーザーの好き嫌いが残されているのは言うまでもありませんが。


すぎもと たかよし SUGIMOTO TAKAYOSHI

サラリーマン自動車ライター

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いすゞFFジェミニ4ドア・イルムシャー(1986年式)
趣味
オヤジバンド(ドラムやってます)/音楽鑑賞(ジャズ・フュージョンなど) /カフェ巡り/ドライブ
好きな有名人
筒井康隆 /三谷幸喜/永六輔/渡辺貞夫/矢野顕子/上原ひろみ

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