原因は「お客さまファースト」! 腰痛がタクシードライバーの職業病となるやむにやまれぬ事情 (2/2ページ)

長時間乗車することになる乗務員は独自の自己防衛をしている

 運転席についてもマイカーでは運転しやすいベストポジションとなる位置よりも前めにシートスライドを設定するケースがほとんど。シートバック(背もたれ)も寝かしすぎると乗客に圧迫感を与えるので、垂直に近い位置で乗務するように指導されているようである。

 筆者もたまに乗り合わせたタクシーの運転席背もたれが結構寝ていたりすると、なんともいえない違和感を覚えることがある。理想的なドラポジよりも「利用客ファースト」といったシートポジションがタクシーでは要求されるのである。JPNタクシーになってからは室内高も高いし、セダン系に比べれば窮屈な印象は薄くなったが、やはりシートバックが目立って寝ていれば「?」と思う利用客も多いだろう。

 昭和のころに国民的と言ってもいいほど高い視聴率を誇った、ポリスアクションドラマでカースタントを担当していたスタントマンに話を聞いた時、「いつもスタントに使うタクシーとして使われていたセドリックは、ビニールレザーのシート表皮がやぶれ、スプリングがはみ出しているようなものばかりだった」といった話を聞いたことがある。

 かつてY31セドリックタクシーに乗務していた人によると、「新車として納車されたばかりはまだいいのですが、とにかくシートのへたりが早かったですね。そのため、乗務員の多くは自分用のクッションやシートバックに装着する腰をサポートするクッションのようなものを乗務時にシートに装着していたましたが、それでも腰痛に悩まされる乗務員も多く、腰痛はタクシー乗務員の持病のようなものでした。夏場はシート表皮がビニールなので、数珠というか丸いコロコロのついたものをシートバックにかぶせ通気性を良くさせたりもしていました」と語ってくれた。

 さらに、Y31セドリックよりはクラウンコンフォートのほうがシートが多少良かったようで、会社にセドリックからクラウンコンフォートにして欲しいと言ったこともあったようだ。クッションなどを忘れて乗務した時もあったそうだが、20時間ほど乗務して車庫に帰ってきたときはあまりに身体への負担が大きくて歩くことができず、地べたを這いずりまわっていたとも語ってくれた。

 乗客を意識すれば、ベストともいえないシートポジションともなり、シートの座り心地も長時間乗務を十分意識したものとは言えないタクシー車両のシート。乗務員はそれぞれ独自にクッションなどを用意して自己防衛しているのが現状となっている。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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