話題の新型クラウン! ぶっちゃけ乗ってどうでした? 【ド直球インプレ 御堀直嗣編】 (2/2ページ)

クラウンらしさを体感したのは後席の乗り心地

 19インチと21インチではタイヤの扁平率が異なり、前者が55%、後者が45%である。またタイヤ銘柄も異なる。偏平率とタイヤ銘柄の両面で、新型クラウンのサスペンション設定との相性が違うのではないかと思えた。また自然吸気のダイナミックフォースエンジンは、カムリに搭載されたときからエンジン騒音が大きく、ハイブリッド車に期待される静粛性が不十分で、この点でもクラウンとしては失望感がある。E-Fourの前後駆動力配分が最大でも80:20で前輪駆動感覚が残ることも、これまでのクラウンとは何か違うといった印象を残すのだろう。

 排気量2.4リッターのガソリンターボエンジンのほうは、過給される分、圧縮比も低いはずで、高出力エンジンということからエンジン音が逞しく、Gアドバンスに比べると異次元の乗り味だ。こちらは6速自動変速機が組み合わされ、モーターをうまく調整役として段差を感じさせない滑らかな加速であり、洗練された速さを味わわせる。後輪の高出力モーターの使用領域を増やしているため、後輪駆動の感触を強めながら、前輪も駆動して進路を定めカーブを安定して曲がっていく様子に高級車の趣がある。加えて壮快な運転も楽しめる。

 かつての、ロイヤルとアスリートという個性とは違った乗り味が、GアドバンスとRSアドバンスにはある。好みの違いというより、上下の差といった区別を感じた。

 伝統的なクラウンらしさを体感したのは、後席の乗り心地だ。座って室内を見回したとき、そこにクラウンらしい空間を感じた。言葉ではなかなか表しにくいのだが、4ドアセダンかクロスオーバーかという車種の違いを意識させない、クラウンに乗った手ごたえを覚えさせたのだ。クロスオーバーとなっても、ハッチバックではなくあえて荷室と客室を分けたトランク形式としたのも、そうした思いにさせる一つだろう。乗降性も優れていた。67年におよぶクラウンの歴史に裏付けられたトヨタにしかできない空間設計だろう。

 いずれにしても、クラウンへの新たな挑戦はいろいろな見どころを与えてくれた。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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