栃木県で現代の路面電車「LRT」がまもなく開通! アメリカでは「公共交通」の充実が「反対」されるナゼ (2/2ページ)

アメリカでは交通の便が良くなりすぎるのも問題あり?

 事情通は「日本でも路面電車が走っていたものの廃線となった都市があります。そのとき日本では線路を撤去して再舗装していたと聞きます。ところが、アメリカでは線路をそのままにしてアスファルトなどで埋めてしまっていたと聞いています。そのため、それを掘り起こして整備して復活の際に使っていると聞いています。つまり、まったく新規に線路を引く必要のないケースもあり、日本より復活が容易なのだと聞いたことがあります」とのこと。

 実際調べてみると、そのまま使っているとは思わないが、ロサンゼルス郡都市圏交通局A線では、1961年に廃線となった、パシフィック電鉄ロングビーチ線の廃線跡などを転用しているとのことであった。

 そもそもは渋滞緩和などでLRT復活が検討されたのだろうが、最近ではクルマ利用が抑制できるとした、気候変動対策でもLRTの導入は注目されている。LRTというよりは、路面電車というほうがしっくりくるが、南カリフォルニアのサンディエゴ市中心部からメキシコ国境までを結ぶ路線など、複数路線が用意されている「サンディエゴトロリー」は、筆者もサンディエゴ中心部に宿を取り、メキシコ側国境の街となるティファナへ買い物に行くとき利用したことがある。筆者が乗った路線では、多くの駅前(停留所前?)に広大な駐車場が用意され、“パーク&ライド”が可能となっていた。

 ロサンゼルスでさえ、LRTが走る時代となっているのだが、路線バスはともかく、地下鉄も含んで公共交通機関の新規開業計画が発表になると、アメリカでは日本ではあまり考えられない反対運動が起きることがある。それは、着工予定路線の沿線住民による「治安が悪くなる」という反対運動である。

 そのロジックとは、とくに公共鉄道が開業することで、バスより周辺地域へのアクセスが簡単となり、犯罪者が鉄道を利用して窃盗などの犯罪を起こしにやってくるというのである。裕福な地域でそのような反対運動が起きやすいのだが、当然そのような家庭では家政婦さんなどを雇っているので、そのような人たちの通勤も楽になるので良いように思うのだが、治安が悪くなるというイメージが優先してしまうようだ。

 地元に住む事情通によると、「確かに、最近の犯罪傾向としては路線バスなどを利用して遠征して犯罪を起こす集団も目立っているので、考えすぎというわけでもないでしょう」とのこと。クルマで目的地へ向かおうとすると、警察官による職務質問にあうリスクが高いこともあるようだ。そして最近では、ライドシェアサービスを移動の足として利用し、強盗に入ったという事件も報道されている。

 筆者は以前カリフォルニアナンバーのレンタカーで、ラスベガス近くの新興住宅地を見に行ったら、セキュリティのクルマにフリーウェイに入るまで追尾されたことがある。最近は「ゲートハウス」などと呼ばれ、広大な住宅団地の周囲を壁で囲む新興住宅地も多くなっている。防犯対策にかなりの金銭的も含めエネルギーを注いでいるのは理解できなくもない。ただ、「公共交通機関が充実すると犯罪増加に結び付きかねない」と反対運動を起こすのは、日本ではなかなか思いつかない発想であるととも、それがアメリカなんだなと考えさせられた。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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愛車
2019年式トヨタ・カローラ セダン S
趣味
乗りバス(路線バスに乗って小旅行すること)
好きな有名人
渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

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