【試乗】クルマの完成度は高いがワクワクが足りない!? ホンダ・ステップワゴンをレーシングドライバーが徹底チェック (1/2ページ)

この記事をまとめると

■新型ステップワゴンに公道で試乗

■デザインは初代ステップワゴンを踏襲したような見た目となり話題となった

■ガソリンモデルとハイブリッドモデルのe:HEVがラインアップされている

初代を彷彿とさせる話題の新型ミニバンを公道で乗ってみた

 ホンダ・ステップワゴンが新型へとフルモデルチェンジを受けた。新型は、初代ステップワゴンのデザインをオマージュしながら、新世代となる新しいスタイリングを手に入れた。初代ステップワゴンのデザインといえば、食パンのように四角ばったデザインが特徴的で、スクエアな見切りの良いボディデザインと広い室内とが相まって使い勝手の良いミニバンとして人気を博した。そうした美点を改めて新型で復活させたことで、ステップワゴンの存在感をより高め改めて確立しようというのが狙いだ。

 今回のモデルチェンジではふたつのパワートレインが用意されている。1.5リッターのターボチャージャー付き直4ガソリンエンジン+CVTトランスミッションと、2リッター直4ガソリンエンジン+電気モーターのe:HEV(ハイブリッド)で、それぞれにFFモデルと四輪駆動が選択可能だ。

 まずは、1.5リッターターボのガソリンFFモデルに試乗してみる。グレード的にはAIRとスパーダの2系統があり、AIRはよりファミリー的思考の強い量販グレードといえる。AIRの内装はダッシュボード上部にファブリックを配し、新型フィットの流れを汲むようなデザインがなされている。サイドウィンドウの下からフロントウィンドウ下部へ水平基調で見切りの良い視界を確保しているのも特徴。また大きな三角窓を採用して斜め前方の視界も確保している。

 乗り込む際にフロアの低さに驚かされる。測定したところ、フロア高は地上からおよそ40cmであり、背の高い車に乗り込むというような感覚を持たずに乗り込み着座することができる。またヒップポジションも同様に低くミニバン的な高い視点ではない。むしろ乗用車的な視点の高さといえる。

 ダッシュボードセンターには11.4インチの大型モニターが備わり、ドライバー正面には10.2インチのデジタルグラフィックメーターが採用されている。メーターは左右に2つの丸型表示グラフィックが映し出され、その中心部に各インフォテンツが選択表示できる。インフォテンツ機能はステアリングの左右スポークそれぞれに右側メーター左側メーターの表示内容を選択するスイッチが配置されているので扱いやすく、また視認性にも優れている。ダッシュボード上のエアコン操作パネルは左右独立クライメイトで物理スイッチを備え、走行中でも扱いやすい。

 シフトレバーはダッシュボードのドライバー側に配置されていて、フロアはフラットなままでドライブスルーとして後席への移動も容易となっている。足もとを見るとフットレストとペダル配置のレイアウトもよく、またステアリングはグリップ形状を着座位置に合わせて最適化するなど、見栄えは今ひとつだが、グリップ感はとてもしっくりとくるものとなっていた。

 走り始めると、CVTがあまりエンジンを大きく回転させずに早めにロックアップを行いエンジン回転数としては常に1000〜2000回転の間で加減速を行いながらキビキビと走ることができる。シビックのCVTではエンジンを高回転まで回し、ドライバーに運転感覚を感じさせるのを狙っているセッティングがされていたが、それを行うとエンジン音がノイジーとなり、快適性面で好ましくないと感じていた。そういう意味で新型ステップワゴンのCVTは低い回転数で、レスポンスの良いターボがトルクピックアップを良くし、静かに快適で、かつキビキビと走ることができる好印象を受けた。

 サスペンションはしなやかな乗り心地となっていて、これは従来モデルよりも15〜20%バネレートを下げたことが影響している。バネレートを下げることによってサスペンションストロークが増え、ボディへの入力や、ストローク変化のジオメトリー変化を正確にするために、ストラットタワー砲筒の剛性を高めるなど、シャシー側のチューニングも行っている。バネレートが下がっているとはいえコーナーで車体が大きくロールしてしまうようなこともない。これは重心の低さが生かされていることが大きく、ライントレース性なども適切で安心感があり四輪の接地性が高く感じられる乗り味だった。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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