【試乗】ステップワゴンの大本命はスパーダのe:HEV! ライバルを上まわる「上質感」が凄い (1/2ページ)

この記事をまとめると

ステップワゴン スパーダe:HEVのFFモデルに試乗

・ライバルに対して圧倒的な静粛性が感じられた

・エアーグレードには設定がない電動パワーテールゲートが便利

室内の使い勝手は文句ナシの進化っぷり

 1996年に登場した初代ステップワゴンは、日本の多人数乗車可能なファミリーカーのパイオニアの1台として、以来、Mクラスボックス型ミニバンクラスの主役として君臨してきた。先代にあたる5代目は、第5のドア、「わくわくゲート」が大きな特徴だったのだが、左右非対称デザインが一部のユーザーに受け入れられなかったのも事実だった。

 そしていよいよ、先代のリベンジを果たすべくデビューしたのが6代目となる新型ステップワゴンだ。初代に回帰したようなシンプルでボクシーかつ、水平基調のエクステリアデザインはどこか懐かしい印象も受ける。初代当時、小学生でステップワゴンに乗せてもらっていた子供も今や父親、母親の世代。今度は子供を乗せる立場となり、新型ステップワゴンに特別な想いを持つ人も少なくないはずだ。

 さて、新型ステップワゴンは、新たにエアーと名付けられた標準車、おなじみのエアロモデルのスパーダ、そして生産中止となったオデッセイの受け皿となる最上級のプレミアムラインの3グレードの展開となる。ボディサイズは拡大され、全長4800×全幅1750×全高1840~1850mm、ホイールベース2890mmとなり、全車3ナンバーとなる。もっとも、最初に言っておけば、運転視界の良さ、先代と同じ最小回転半径5.4m(16インチタイヤ装着車)の小回り性の良さによって、取り回しに気遣うことはまずないはずだ(車幅より全長の拡大が駐車性に影響しないでもないが)。

 パワーユニットはここで紹介するスパーダ(プレミアムライン)のe:HEVモデルの場合、2リッターエンジン+モーターで、それぞれ145馬力、17.8kg-m、184馬力、32.1kg-mを発揮する。WLTCモード燃費はグレードによって先代同等の19.5~20.0km/Lとなる。

 新型ステップワゴンはインテリアの進化も著しい。もはやクラス最大級の空間を備え、事実、先代比で室内幅+45mm、室内高+20mmの広さを誇る。そして、すっきりとして上質感あるインパネデザイン、サポート性に優れた1列目席のかけ心地の良さはもちろん、先代のウィークポイントだったキャプテンシートのアレンジ性が向上。先代は前後のみのスライドで、先代ノア&ヴォクシー、セレナのように左右スライドができなかったのだが、新型では標準スライド600mmに加え、先代より高めにセットされた(ヒール段差+10mm)左右キャプテンシートを中寄せすることで865mmものロングスライドを実現。同時にキャプテンシート仕様でもセミベンチシート化することが可能になったのだ(子育て世代はうれしいはず。もちろん、かけ心地もかなり上質)。

 シート操作を行うレバーがシンプルな1レバーになり、スパーダ以上のキャプテンシートにオットマンが付いたのも特徴点だ。なお、室内側のパワースライドドアスイッチは、手の届きやすいセンターピラーにも装備されるようになった。

 ミニバンは3列目席があってこそだが、先代は特徴的な床下収納をフラットに実現すべく、クッションを薄くせざるを得なかった。それがかけ心地に影響するのは当然だが、新型では3列目席の座面厚を21mm増すとともに、シートバック高を45mm高めている。さらに着座性、立ち上がり性にかかわるヒール段差(フロアから座面までの高さ)が実側で先代の315mmから340mmに高まり(メーカー値は+20mm)、より自然な着座感が得られるようになり、また、前方見通し性が格段に向上(クルマ酔い低減効果もあるらしい)したあたりも、さりげない、しかし3列目席にこだわった、多人数乗車のあるべき着実な進化と言っていいだろう。ただ、スパーダ以上の合皮コンビシートは表皮の張りがやや強め。3列目席クッション感ではエアーのファブリックシートが上まわる印象だ(体重65kgの筆者の場合)。

 そうそう、わくわくゲートの廃止によってテールゲートは一般的な1枚ものになっているのだが、先代に対して縦に約13cm短く、約14kg軽量化されているのが特徴だ(エアーにはちゃんとした無塗装バンパーもある)。

 スパーダ以上のグレードにはパワーテールゲートが標準装備となり、しかも任意の位置で止められるメモリー機能付き。車体後方にスペースのない場所に止めても、先代のわくわくゲートのサブドア同様、荷物を出し入れしやすいことになる。ただし、標準グレードのエアーにパワーテールゲートは設定されていない……。

 新型ステップワゴンは先進運転支援機能のホンダセンシングを始めとする装備も一段と充実させている。なかでも先代になかった電子パーキングブレーキとオートブレーキホールド機能(メモリー付き)を追加したのに合わせ、ACC(アダプティブクルーズコントロール)はついに渋滞追従機能付きとなり、設定速度も0~130km/hに拡大されている。高速道路の利用機会の多いユーザーにとって、大きなメリットなることは間違いなしだ。

 新型ステップワゴンe:HEVスパーダの運転席に着座すれば、まずはサポート性に優れた先代比ウレタン厚23mm増し、ウレタン密度27%UPのボディスタビライジングシートのかけ心地の良さ、立ったAピラーによるすっきりとした前方、斜め前方視界が好印象。水平基調のショルダーラインによって、左右の車両感覚のつかみやすさも文句なしである。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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