【試乗】ステップワゴンの大本命はスパーダのe:HEV! ライバルを上まわる「上質感」が凄い (2/2ページ)

走りの上質さは先代の比じゃない!

 NSXにも採用されるボタン式CVTセレクターボタンをDレンジにセットして走り出せば(電子パーキングブレーキは自動解除)、e:HEV=HVらしくモーター走行でスタート。じつにスムースで静かだ。速度を高めていけば主に発電を担うエンジンが始動するものの、そうとは気づきにくいシームレスさ、エンジンノイズ・振動の遮断のうまさによって車内の静かさが保たれる。32.1km/Lものトルクを発揮するモーターの力強さは2.5リッターエンジン並みと言って良く、電動感の強い加速感は先代の非ではないレベルに達している。

 16インチタイヤを履くスパーダの乗り心地は、新型の押し出し感のないシンプルなデザインイメージからすると、ちょっと硬めだ。しかし言い方を変えれば、ドシリとした骨太感ある、エアロ&スポーティグレードたるスパーダ系らしい乗り味ということになる。ちなみにスパーダの16インチタイヤがホンダらしいスポーティな乗り心地、操縦性に振られたキャラクターであることは間違いないが、短時間試乗したプレミアムラインの17インチタイヤは、大径ながらむしろプレミアムな乗り心地求めた「コンフォート、乗り心地重視」という説明ではあるものの、試乗した横浜みなとみらい周辺の路面では、なぜかその差は感じにくかった。

 とはいえ、スパーダ、プレミアムラインともに首都高のざらついた路面や、カーブ、接続路にあるゼブラゾーンでの振動のなさ、そしてうねり路や段差越えを含む終始フラットな快適感はもう見事と言っていい。何しろスライドドアまわりの構造用接着剤の使用、サイドシルの断面増しなどによる剛性UPが徹底されているからだ。

 市街地を走らせて、おおっ!! と思わせてくれたのが、ライバルを圧倒する車内の静かさ、そしてこもり音のなさだ。ボックス型ミニバンはスピーカーのような箱型ボディゆえ、ボディ振動・振幅などによってこもり音は避けられない。最新のノア&ヴォクシーでさえ、こもり音発生のピークとなる1/3列目席のこもり音は取り切れていない。ところが新型ステップワゴンは1/2/3列目席すべてに座って確かめたのだが、今回、試乗した横浜みなとみらい周辺の首都高速道路を含むコース、路面において、車内のこもり音は皆無に近い。その理由をすべて書いていくと長文になるので、このWEB CARTOPの別稿コラム(https://www.webcartop.jp/2022/06/904176/0/)でじっくりと説明しているが、ボディ剛性のほか、ウインドウウエイトの装着、テールゲートのストッパーマウントの増強といった徹底した対策が功を奏していると言っていい。

 結果、先代のウィークポイントでもあった1-3列目席の会話明瞭度が向上。多人数乗用車にこそ必要な車内の静かさという要件を見事に達成、進化させていることになる。これなら車内での会話が一段とはずみ、またドライブ中の聴覚からくる疲労度の低減にも役立つはずである。

 今回は山道を走る機会はなかったのだが、市街地、首都高速のカーブを走った範囲でもわかることは、操縦性のレベルアップだ。ボディ剛性の高さはもちろん、車幅拡大に伴うワイドトレッド化、リヤサスのストロークアップなどによって、常に4輪の接地荷重変化を最小限に抑えた、タイヤの接地性に優れた安定感抜群のフットワークを示してくれる。合わせて、自然かつリニアで、しかし唐突感のないステアリングの絶妙な応答性、ライバルに対して乗員の上半身が左右に振られにくいことも(クルマ酔いの原因にもなる)確認。多人数乗用車として適切な安定感、快適感の高さを、そうした操縦性から後席乗員も享受できることになる。

 ただし、さらなる改善をお願いしたい部分もある。たとえば、爽快で気持ちいい走りを楽しませてくれた新型ステップワゴンの試乗を終え、運転席から降りようとした時、前席のサイドサポート部分が立ち上がりすぎて、ライバルのようにスルリと腰をずらし、降車することができにくい。よって、地面が遠く感じてしまいがちなのである。

 そして試乗したスパーダ以上のグレードなら問題ないのだが、新型ステップワゴンのキャラクターを体現している標準車のエアーに、わくわくゲートの便利さを補填するメモリー付き(ここがポイント)パワーテールゲートがオプションでさえ選べないのは非常に残念だ(オットマンはマストではないと考える)。ぜひ、オプションでも設定していただきたいと願う(開発陣に進言済み)。

 新型ステップワゴンの1~3列目の全席で体感できる圧倒的な静かさ、こもり音のなさ、快適感は、多人数乗車であるミニバンだからこその、ライバルをしのぐ商品力の高さであることは言うまでもない。初代から26年。ステップワゴンの着実な進化に大いに納得させられたというのが正直なところだ。全グレード中のお薦めグレードはズバリ、ここで乗ったスパーダのFF、2列目キャプテンシートの7人乗りである(17インチタイヤを履くプレミアムラインは最小回転半径が16インチタイヤの5.4mから5.7mになることもあって)。

 ちなみに先代HVモデルにオプション設定されていた、ノア&ヴォクシーHVにはあるAC100V/1500Wコンセントは不採用。先代のオプション装着率が低かったのが理由だが、この時代、ミニバンがアウトドアでも便利に使え(2/3列目席フラットアレンジではベッド長2040mm)、電源車として災害時にもAC100V/1500Wコンセントが大活躍してくれることを考えると、残念過ぎる装備のドロップと思えてしまう。なお、標準車のエアー、ガソリン車(4WD)の試乗記は、コチラをご覧いただきたい。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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