カタログ値がまったく参考にならない時代もあった! WLTCでやっとまともになった「燃費数値」の歴史 (2/2ページ)

WLTCでようやく世界基準となった燃費表記

 こうした非現実的な数値を是正すべきという声が挙がり、2011年にJC08(Japan Chassis 2008=発案当時)モードが適用されることになった。JC08モードは、コールドスタート時(エンジンが十分に暖気されていない状態)の燃費や、走行状態を定速ではなく遅速の変化をつけたり、登坂降坂走行を加えたりと、より実際の走行に近い状況による燃費測定とした。しかし、実際のユーザー燃費は、極端な場合はこれの6割程度となり、依然として実用燃費とかけ離れる燃費表記だった。

 さて、JC08に代わって新たな燃費表示の基準となったWLTCだが、これは大もととなるWLTPが世界基準での排出ガス測定、走行燃費測定の共通化、統一化を図ったもので、これに従った燃費測定方法と考えてよい。

 JC08との違いは、WLTCではさらに1歩踏み込んだ燃費測定方法となり、走行燃費はWLTC市街地モード、WLTC郊外モード、WLTC高速道路モードと3モードに分けて表記されることになった。内容としては、走行モードの平均車速の上昇、アイドリング時間比率の減少(アイドリングストップ機構装着車も考慮して)、コールドスタート比率の増加と、JC08よりさらに実用燃費に近い内容となるような改善が図られている。

 なお、WLTCとJC08を比較した場合、その成立背景が異なっている点も見逃せない。WLTC(WLTP)の特徴は、排出ガス測定を世界レベルで共通化、統一化した点にあり、二酸化炭素排出に関する環境保全に対して強い危機意識を持ったUNECE(国際連合欧州経済委員会)によって内容が検討された点にある。

 燃費性能といえば、ユーザーの懐具合に直結する大きな関心事だが、消費する燃料が少なくなることは、それだけ排出する二酸化炭素の量も少なくなるという点がポイントで、WLTC燃費の設定は、世界規模で排出ガスの削減に取り組もうとした意識の表れであるとも言えるものだ。


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