ルノーが日産の株式を大量に手放すって何があった? 「ルノー日産三菱」アライアンスのクルマに影響はある? (2/2ページ)

当面はアライアンスを前提として商品企画が進められる

 もちろん、こうした状況を未来永劫続けるというのであれば、ルノーと日産は対等な関係になったように見えて、ルノーが上位にいるという関係は変わらない。しかし、将来的には信託会社の持つ28.4%の日産株式の行方が想像できる取り決めも交わさされている。

 それが以下のふたつの条項だ。

■ルノーグループは、同社にとって商慣習上合理的な場合、信託会社に信託した日産株式の売却を指示するが、特定の期間内に売却する義務は負わない

■ルノーグループは日産と協調的で秩序あるプロセスにおいて自由に信託内の日産株式を売却できるが、日産は筆頭の売却候補として、直接もしくは第三者を通じてその優先的な地位を享受する

 信託会社に預けた日産の株式については、いつまでに売るということは決まっていないが、もし売るとすれば日産と協議の上であり、また買い手の第一候補は日産になるということだ。

 ルノーと日産のリバランスと、それに伴う株式の処理について発表されてから日産の株価は480円前後となっている。信託されている株式は12億株弱とされるので、市場価格で日産が買い取るとして5760億円が必要となるわけだ。

 これだけの支払いを一気に行うのは日産の経営への影響も少なくない。そのあたりの状況を話し合いながら、リバランスしたアライアンスの有効期間となる15年間(2038年あたりまで)に日産が信託会社から株式を買い取るというプランであろうと予想できる。

 もっとも、ルノーグループとしては株式を手放してしまえば、配当金を得られなくなるわけで、28.4%ぶんの株式については、できるだけ高値で売却したいと考えるはずだ。その意味では、今後ルノーグループから日産に対して株価を上げるような経営への圧力が強まるといえそうだ。

 さて、ルノーと日産のリバランスによって、ルノー日産三菱自によるアライアンスにはどのような影響が出てくるのだろうか。

 現時点では、3社がそれぞれ強みを持つマーケットで中心的な役割を果たすこと、各社のアーキテクチャやプラットフォームなどをアライアンスで有効活用するなど基本方針については、さらに加速させていくと発表されている。

 実際、アライアンスを前提に商品企画を進めている状況で、いきなり独立独歩的な製品開発ができるはずもない。とくに電動化やコネクティッド領域では個社で進めるよりもアライアンスによる数の強みを活かすことは避けがたく、当面はアライアンスを前提として商品企画が進められる状況は変わらないといえそうだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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