バス事業者による意見広告が話題! 令和の時代にも消えないバス&タクシーの「カスハラ」問題の根底にあるもの (2/2ページ)

カスハラ問題の根底にあるのは職業差別

 過去にいろいろあったからといって、カスハラを行っていいということもない。ただ、これはタクシー業界の話。路線バスでは多少強面の乗務員がいたとしても、タクシーほど過去でも怖い目に遭うことはなかっただろう。それでも路線バスでもカスハラが絶えない。

 このような旅客輸送業界のカスハラ問題の根底にあるのは、乗務員という仕事に対して世間の差別意識の強さがあるだろう。確かにタクシーやバスを運転しているだけの簡単な仕事と思われがちだが、路線バスでは道路渋滞などでバス停到着が遅くなる(遅発)ことはやむを得ないとしても、バス停の時刻表(予定通過時間)より早く、そのバス停を通り過ぎる(早発)は絶対あってはいけないので、時間調整がまず大変である。さらに一般的な交通事故防止のほかに、車内での転倒など車内事故の防止も意識して運転しなければならない。タクシーも時間ごとに流す場所を変えるなど、単純に街を流しているわけではない。

 また、そもそも論としてバスやタクシー乗務員は、世の中がイメージしている、たとえばお金持ちのお抱え運転手とも異なる。お抱え運転手では乗せる人(お金持ち)は雇用主となり、そこには上下関係が成立するが、タクシーや路線バスにおける、乗務員とお客の間には、上下関係が成立するような雇用関係はない。そこを無意識に勘違いしている人も多いようである。

 江戸時代の駕籠屋さんまでその源流を辿っても、旅客輸送業界というのは職業として見下されてきていると筆者は感じており、日本人のDNAの奥底にそれが刻まれているのかもしれない。カスハラなどと呼ぶとなんか新しい問題のようにも見えるが、旅客輸送業界に限らず、カスハラの根底には根深い職業差別があるものと筆者は考える。多くの人の間に意識しているか否かは別としても職業差別というものがある限りは、カスハラは増えることはあっても減ることはないだろう。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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愛車
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趣味
乗りバス(路線バスに乗って小旅行すること)
好きな有名人
渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

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