【試乗】CX-60 PHEVは車格にマッチしたジェントルなパワーユニット! 充電設備が自宅にあるならアリな選択だった (2/2ページ)

EV走行時は過度な加速特性がなくジェントル

 PHEVは走り始めからほとんどの速度領域でEV走行が可能だ。それゆえトルクピックアップに優れ、スムースで静かで滑らかな走行フィールが得られている。かといって2090kgの車重に対して圧倒的なトルク値ではなく、8速ATの変速も介在するので、多少ラフなアクセルワークをしても、世に多くあるハイパワーEVのような暴力的な加速はさせず、車格に合ったジェントルな走行感覚に仕上げられているのだ。

 一般道、高速道路もすべてEVで走行できるが、駆動用バッテリーは17.8kWhと同クラスのBEV(バッテリー電気自動車)に比べ容量は小さいので、HVモードを使って必要なシーンのためにバッテリー充電量を温存しておくことを勧めたい。WLTCモードでのEVレンジ走行距離をみると74km走行可能なので、家庭で毎日充電できる環境があるならEV車として扱える。一方で、50リッターの燃料タンクにレギュラーガソリンを満タンにしてさえおけば、800kmを超える総航続距離が可能となるだろう。

 高速巡航は静かで快適。サスペンションはバネレートが硬くなく、コーナーではリヤサスペンションのロールセンターが低く車体ロールを感じさせるが、それがインリフトとアクスルのジャッキアップ入力を低減し内輪の接地性を高めているので、電動モーターの発する低速域からの大トルクを後輪でまず受け止める準備をシャシー側でもしている、ということだろう。

 だがしかし、路面のちょっとした段差通過時や、ともすれば路面塗装の小さなギャップでもリヤタイヤ/ホイールが「ダン、ダン」と衝撃波を発し、きついハーシュネスが感じられる。これはXD-HYBRIDでも同様だが、マルチリンク式リヤサスペンションの一部接続部がピロボール化で剛結されていることによると考えられる。

 一般的にはラバーブッシュなどで力を逃がし、車体側への衝撃を和らげつつコンプライアンスステアで安定性を確保するのだが、ピロボール化によりトー変化を起こさない剛性にこだわった結果、ハーシュが収斂されることなく車体に伝わってしまうのだろう。

 この味付けは試乗してみないと感じられず、理解するのは難しいと思うので、路面段差のある部分で確認試乗することを勧めたい。

 実用燃費的には13〜14km/Lといったところで、XD-HYBRIDの20km/L台かつ軽油による燃料価格の差を考慮すると、経済性はXD-HYBRIDに軍配が上がりそうだが、充電インフラがあり日々をEVレンジのみで過ごせるなら状況は変わる。V2L(車両の駆動バッテリーから家電機器に給電)やV2H(車両の駆動バッテリ−から充放電設備を介して家の電力源として活用)などの大容量バッテリー搭載車としての活用範囲の広がりや災害時予備電源車としての位置づけなど、PHEV車ならではの価値も見過ごせない部分だろう。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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