「ただの雨」「ただの風」感覚じゃ危険! 日本全国を襲う「異常気象」によるクルマへの被害と対策をじっくりと考えた (2/3ページ)

イザというときの備え「車両保険」

エコノミー型車両保険も自然災害をフルカバー

 クルマを所有するすべてのドライバーには自賠責保険の加入が義務づけられている。そして、自賠責保険で補償できない分(対人・対物など)をカバーするのが損保会社の任意保険で、現在の加入率は約9割。さらに、自損事故も含めて自分のクルマの損害もカバーする「車両保険」の加入率は、そのうちの半数程度だという。

 ここで保険の宣伝をするつもりはないが、昨今の異常気象による被災の頻度や、クルマが受ける損害の大きさを知るにつけ、安い掛け金ではないが、車両保険に入っていたほうがいいとシミジミ思う。

 浸水や、降雹、竜巻、落雷のほか、台風の強風などで飛来した木片や屋根瓦がボディを直撃したなど、自然災害が原因のすべての損害がカバーされるからだ(ただし契約している補償限度額まで)。

 自然災害による損害額は莫大で、水没したり、雹でボディが広範囲にダメージを受けた場合の修理費用は数百万円にのぼることもザラ。それが全額自腹か、一部でも補填されるかの差は大きい。

 また、修理金額が補償限度額を超えた場合は、全損扱いで保険金を次に買い換えるクルマの購入費用の一部に充てることも可能だ。

「一般型」と比べて補償範囲が狭い分、掛け金が抑えられる「エコノミー型」と呼ばれる車両保険でも、自然災害による損害については、すべてカバーされる点もまた心強い。

 自動車保険は、加入期間に応じた保険料の割引(/割増)が受けられる制度、“ノンフリート等級”を設けている。基本的に1回の事故で3等級ダウン。割引率が下がって保険料は上がる仕組みだが、自然災害による"事故"については、等級のダウンは1つ。2年後には元の等級に戻る優遇措置も(通常は4年後に元の等級に戻る)。

 これは、自然災害は避けようがないことを考慮してのこと自然災害でも、異常気象と異なる地震、噴火、津波による被災(事故)については特約を付けない限り適用外となっているので念のため。

冠水車・雹害車は査定で大幅な減額も……!

 では、車両保険に入っていれば万全。なんら問題はないか、といえば違う。

 まず、近年頻発している“雹害”。ダメージはボディの上部で大きいが、凹んだ屋根のパネルをCピラーから切り離して新しいパネルに交換する修理を行うと、下取り/買い取り査定で、“事故車”扱いとなり、大きな減額を余儀なくされる。

 というのも、本来一体となっているパネルを切断し、熱を加えて溶接すれば、強度・剛性が著しく落ちる。また、パテを盛った接合部分はいずれ痩せる(凹む)など、修復の痕跡があらわになってしまうためだ。

 もっと深刻なのは冠水車で、一般社団法人・自動車公正取引協議会によれば、ここ数年、中古車販売店と消費者とのトラブル(冠水車を冠水車ではないと偽って販売するなど)も社会問題化しているという。

 動かなかくなったエンジンやトランスミッションといった機能部品は分解整備や、新品に交換するなどで修復可能だが、コンピュータ制御された最近のクルマには無数の配線が張り巡らされ、その結線部(コネクター内)が湿気を含むと、サビを生じてショートするなど看過できないトラブルも。

 さらにキビしいのは車内。大抵の場合、クリーニングだけで完全に元に戻すのは不可能。汚れや悪臭が残り、汚泥に含まれるウイルスや細菌によって健康被害を引き起こす恐れもある。それこそフロアカーペットから内張り、シート、センターコンソールやダッシュボード……いっさいがっさい新品に交換する必要があり、修理費用が車両保険の補償限度額を超えてしまうことも珍しくない。

 仮にそこまでして直したとしても、冠水車であることを隠せるわけはなく、大幅な査
定ダウンは免れない。

 最近は、冠水車を専門に買い取る業者(部品取りや、多少の汚れや臭いは気にしない他国に輸出する)もある。一生に一度あるかないかのことかもしれないが、不運にも冠水させてしまったら、修理に出す前に相談してみる価値はある。


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