人気車種は5年の「残価設定ローン」を組んで3年での乗り替えがお得なケースも! 残クレで5台を乗り継いだ筆者が語る賢い買い方 (2/2ページ)

メーカーやディーラーが残価設定ローンに積極的な理由とは?

 ただし、ホンダディーラーで聞く限りは「実際の再販価値はこれよりかなり高い」と異口同音に話してくれる。日本一売れている新車であるし、すでにN-BOXユーザーの間では残クレを組んで短期間でN-BOXからN-BOXへ乗り継ぐ人も多いとのことである。

 実際より低めの残価率でローン計算しているので、よほどの不人気車でない限りは初回車検前後で採算分岐点がやってくる。つまり、採算分岐点で下取り査定を行い算出された査定額で残債を相殺することができるのである。前述したN-BOXの試算で行くと、仮に初回車検のタイミングで採算分岐点がきたとすると、本来は36回払いで組むと月々5万400円払う必要のあるところを、3万5500円で3年間払い続けただけで次の新車に乗り換えることも可能なのである。

 筆者もすでに残価設定ローンを利用して15年ほどで5台新車を乗り継いでいるが、いずれも5年払いで組んで、初回車検前後で乗り換えている。筆者は諸費用分プラスアルファ程度の頭金を入れるのだが、最近はフルローンで組む人も増えているとのことで、店頭でも「フルローンで組むのがお得ですよ」などと勧めてくるセールスマンもいる。

 残価設定ローンをけっして万能だとか、絶対おすすめと言うつもりはない。車両価格の40%近くを支払い最終回分として据え置くわけだから、支払いが進んでも残債はなかなか減ってくれない。残価設定ローンでは再ローンを組んでさらに乗り続けることができるケースもあるが、たとえば3代目アルファードでは5年後でも残価率が50%を超えてしまい、売れ筋モデルでは残価相当据置額が240万円になるケースも目立っていた。しかし再ローンは2年払いしか組めないので、割賦元金を単純に24回で割っても10万円、つまり月々10万円払わなければならず、「現実的に再ローンという選択は厳しい」という声も大きい。

 中古車市場で人気が高いために残価率が高くなるだけでなく、当該車の市場価値を上げるために意図的に残価率を上げているケースもある。こうなると、前述してきたような支払い途中での乗り換えはほぼ不可能となり、当該車もしくは当該メーカー車を乗り継がざるを得ない状況になってしまう。残価率が高いほど残価設定ローンを利用する魅力が増すどころかリスクが高まっていくので、ほどほどの残価率がいいとされている。

 メーカーやディーラーが積極的に残価設定ローンを勧めるのは、もちろん新車販売促進と、短期間で乗り換えてもらいたいというところが大きい。ただ、そのほかに中古車市場への安定した車両の供給がある。残価設定ローンには、月間走行距離や内外装の傷や汚損などによる減点範囲が決められ、これを超えると追加でお金をとられることがある。現場のセールスマンは追加が発生するなどのトラブルを防ぐ意味からも、走行距離が過走行気味になる人などへは、あくまで購入者が希望しなければ勧めないようにしているとも聞いている。

 つまり、一定の基準をクリアした車両をどれくらいのタイミングでどの程度中古車として供給できるのか、残価設定ローンでの販売が増えればそれがある程度読めるようになるのである(安定供給できれば結果的に残価率の安定にもつながる)。とくに新車ディーラーでは新車販売ではほとんど利益は出ないとさえいわれてる。アフターメンテナンスもBEV(バッテリー電気自動車)が増えれば頭打ちになるのは目に見えている。そこでいま注目しているのが中古車販売なのである。もちろん、新車販売でも残価設定ローンで売ることができ、ある程度より確かに新車販売台数の先読みもできるのである。

 残価設定ローンは自動車ユーザーが多様化するなかで生まれ普及してきたものであり、新車に乗るためのひとつの選択肢にすぎない。1台のクルマを長い間大切に乗り続けたいと言ったカーライフの人には必要のないものなのは当然の話。ただ、実際の損得は別としても筆者は15年間ほどで5台乗り継いできたが、現金払いであったらこのようなペースで乗り継ぐことはまずできなかっただろう。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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