いま新車の値引きができなくなっている! それでもお客にとって「悪い状況ではない」理由とは? (2/2ページ)

値引き交渉の手間が減り公平性が保たれるという側面も

 筆者が聞いた話では、少し前まではディーラーオプション総額の20%ほどまでは値引き余力があると聞いていた。だからといって不必要なものまでガンガン装着することはお勧めできないが、フロアマットだけでも、敷く面積の広いミニバンでは10万円ぐらいとなり、さらにミニバンでは装着するオプションも多いので、ディーラーオプションでカーナビやドラレコ、ETCなどまで装着すれば総額で数十万円になることも珍しくない。そこからの20%引きは大きかったが、いまではそこまで値引きはできないとのこと。

 小売価格ベースで車両価格の単純な値上げが目立たないなか、ディーラーオプション個々も目立った値上げを行っていないようなので、やはり値引き余力が減っており積極的に値引きできる状況ではないようだ。さらに、下取り査定額の上乗せについては、いまは沈静化したものの一時的に新車の納期遅延が深刻となり、中古車相場の底上げが起こったこともあり、新車販売での利益の目減りを下取り車の再販で補おうという動きも目立ち、以前ほどは下取り査定額の上乗せができなくなっているディーラーが多いようだ。もちろん、利益をどうするかはディーラー個々の判断なので、あくまで薄利多売をつらぬき目立った値引きの抑制を行わないところもあるかもしれないが、全体で見れば新車購入時の値引きは引き締まっているのが現状である。

 このような状況もあるのか、過去には値引きアップの最終兵器にもなるとして、ディーラーへ乗っていた愛車を下取りに出すケースが多かったのだが、最近は買い取り専業店に売却してしまうケースもだいぶ目立ってきている。買い取り専業店もしくは個人売買で愛車の処分をすれば、今後、事務手続きの整備と新車のデリバリーサービスが進めば、まさに一度も店頭を訪れずにオンラインでのみ新車を購入することも可能となるだろう。

 また、対面で交渉しないと値引きも含め、満足いかない条件で購入できない現状も、値引き販売が抑制されるリスクもあるかもしれないが、誰もが手間なく公平性の高い購入条件で新車を手にすることができるようになるかもしれない。

 値引きが締まるというのはマイナスイメージだが、いままでとは異なる値付け(割安感のある車両本体価格設定)を行えばそんなにマイナスイメージにもならないだろう。いまの状況を逆手にとれば、基本的に“昭和スタイル”で停滞していた新車販売のスタイルの一新につながるかもしれないと前向きに捉えることもできる。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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