電動化には「別の方法」が必要! 大型トラックに乗用車のようなBEV化やFCV化が無理なワケ (1/2ページ)

この記事をまとめると

■世界中で電気自動車が普及しつつあるが大型車両の世界にはまだ普及していない

■リチウムイオン電池はそもそも大型車両に使われることを想定して開発されていない

■架線を使った電力供給システムなど大型車の分野にはいままでとは違ったアプローチが必要

大型車両は従来のリチウムイオン電池との相性が悪い

 荷物を満載した大型トラックの原動機(ディーセルターボエンジン)は、乗用車でいえば常にアクセル全開で走っているような過酷な負荷を受けている。一方、乗用車は、たまにアクセル全開加速をすることはあっても、日常的にそうした運転をしているわけではない。しかも、高速道路の走行中であっても、一度流れに乗ってしまえば、アクセル開度は4分の1〜5分の1といった、軽くペダルに足を載せている程度ではないだろうか。

 もちろん、速度無制限区間のあるドイツのアウトバーンでは、時速200キロメートルで巡行する際など、アクセルペダルをしっかり踏んでいるという意識を持つほど、深くペダルを踏み込んで走っている。

 それでも、一般的な乗用車の使い方では、定員一杯に乗車し、荷物も満載して走る場面は限られるだろう。したがって、乗用車で開発が進められたリチウムイオンバッテリーや燃料電池スタックは、その温度管理や耐久性について、大型トラックのような過酷な使用条件を前提に開発されているわけではない。

 ある国内トラックメーカーの技術者は、既存のディーゼルターボエンジンのような数十万キロメートルを使用し続けられる耐久性は、いまのリチウムイオンバッテリーや燃料電池スタックにはないと語っている。

 一方、電気自動車(EV)にせよ燃料電池車(FCV)にせよ、駆動用モーターは低速トルクが大きいので、ディーゼルエンジン以上の力を持つはずだ。このため、本来は大型の輸送に適している。鉄道は当然モーター駆動だし、16両編成の新幹線は、車両が重いはずだがモーター駆動により時速300キロメートルで走れている。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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